株主提案の活発化で注目、「アクティビスト」照準で変貌期待の6銘柄 <株探トップ特集>

2026/05/09 19:30

―東証市場改革と円安で海外勢は躍動、株主総会シーズン接近で注目度上昇へ―

 日本企業に対するアクティビスト(物言う株主)の攻勢は止まるところを知らず、むしろ活発化している。企業規模を問わず資本効率の改善や株主還元の強化を求めるアクティビストの圧力は、日経平均株価を6万円台に押し上げた「陰の立役者」と言っても決して過言ではないだろう。6月の株主総会シーズン前に株主提案を実施する投資家が相次ぐなか、投資妙味を感じさせる銘柄をピックアップしていく。

●アクティビストの日本株投資額は13兆円超

 東京証券取引所が上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営」を要請するようになってから久しい。市場改革に邁進する東証に呼応する形で、資本効率の改善の余地のある上場企業に対し経営の変革を求めるアクティビストの株主提案も増えている。特に海外勢にとって、歴史的な円安水準にある日本の上場会社の株価はドルベースでみて割安感を強めており、日本株への投資意欲を喚起する結果をもたらしている。

 アクティビストによる日本株の投資額は過去最高レベルとなっている。企業の株主判明調査や議決権行使の支援業務を行うアイ・アールジャパンホールディングス <6035> [東証S]の集計によると、2025年において日本で活動中のアクティビストによる日本株投資額は13兆2000億円と、前の年と比べて36%増加。株主提案を受けた企業数は75社と5社増えた。親子上場問題を指摘する提案や、戦略の見直しのための委員会の設置を求める提案が目立つという。

 アクティビストの圧力をもとに企業側が大幅な増配や自社株買いに動いたケースも相次いでいる。過去にはそのショートターミズム的な姿勢ゆえ、企業の中長期的な価値向上に必ずしも結びつかないなどとして、アクティビストに批判の矛先が向かうこともあったが、企業側と建設的に対話する姿勢を示すことで、より多くの一般投資家の支持を得ようとするファンドも現れるようになった。

 足もとでは大手企業に対するアクティビストのアクションが目立つようになり、今年に入ってから米エリオット・インベストメント・マネジメントがダイキン工業 <6367> [東証P]や商船三井 <9104> [東証P]の株式を取得していると伝わった。エリオットはNIPPON EXPRESS ホールディングス <9147> [東証P]の株式を5%超保有していることも明らかとなっている。更に、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]が持ち分法適用会社とするオリエントコーポレーション <8585> [東証P]のあり方を巡り、ストラテジックキャピタル(東京都港区)が株主提案を行ったことも、マーケットの大きな話題となった。

 もちろんアクティビストの投資対象となるのは大手だけではない。目下、3月期の決算発表シーズンにあり、企業業績の見通し(ガイダンス)によって株価が上下に振れやすい時期であることを踏まえ、決算発表を通過しガイダンスリスクが低下した企業のなかから、アクティビスト保有の注目銘柄をいくつか紹介していく。

●アクティビスト保有で注目の6銘柄

◎NSユナイテッド海運 <9110> [東証P]

 主力はばら積み船で、日本製鉄 <5401> [東証P]を筆頭株主とし鉄鋼原料の輸送などを展開。4月30日発表の27年3月期業績予想は、営業利益が前期比12.5%増の231億円の見通しで、ブラジル積み鉄鉱石や西アフリカ積みボーキサイトに支えられる形で市況は好調を維持すると予想する。株価は決算発表後に急伸したものの、PER(株価収益率)は8倍近辺と割安感が漂う。英投資顧問会社のゼナーアセットマネジメントが1月20日報告時点で株式の5.05%を保有。保有目的に関して「状況に応じて、運営及び資本の効率化に向けて、発行者の経営陣との意見交換や、重要提案行為などを行う場合がある」としている。

◎三陽商会 <8011> [東証P]

 総合アパレル大手で、「マッキントッシュロンドン」などを手掛ける。27年2月期は3期ぶりの営業増益を計画。百貨店売上比率が高く、物価高やインバウンド需要の停滞の影響が懸念されるものの、調達原価率の抑制や在庫管理の強化などにより粗利率を改善させる姿勢を示しており、収益性の向上を図っている。PBR(株価純資産倍率)は0.9倍近辺。英投資顧問会社のアセット・バリュー・インベスターズが2月末時点で筆頭株主となっており、4月30日報告時点の保有割合は13.07%。保有目的は「純投資及び重要提案行為などを行うこと」としている。また、約7%を保有する米投資運用会社のサファイアテラ・キャピタルが過剰資本問題の解消を目的として、特別配当を求める株主提案を行ったことも明らかになっている。

◎タムロン <7740> [東証P]

 カメラ用交換レンズ大手。26年12月期は2ケタ増益を計画する。1~3月期はOEM製品で一部受注機種が低迷しながらも売り上げと利益は計画に対して上回って推移。監視カメラ分野は高精細ニーズの高まりが追い風となり堅調に推移しており、FA分野も在庫調整が一巡し需要が回復したとしている。シンガポールに拠点を置く旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが4月7日報告時点で17.38%を保有。保有目的は「純投資」としているものの、アクティビストとされるエフィッシモは断続的に買い増しに動いており、需給面での思惑を高めている。4月14日には国内大手証券がレーティングを最上位に引き上げた。

◎大豊工業 <6470> [東証S]

 トヨタ自動車 <7203> [東証P]を主要取引先とする自動車部品メーカーで、軸受けやダイカスト製品などを提供。4月27日発表の26年3月期決算は営業・経常利益が計画に対して上振れして着地。半面、減損損失の発生で最終損益は黒字予想から一転赤字での着地を余儀なくされた。膿出し後の27年3月期は営業利益が前期比73.8%増で最終損益は黒字転換を計画。同社に対しては著名投資家の井村俊哉氏が関与する投資運用会社fundnote(ファンドノート、東京都港区)が4月22日報告時点で9.79%を保有する。ファンドノートは変更報告書において、スチュワードシップ・コードに則った建設的な対話を通じた企業価値の向上を図る姿勢を示しつつ、「受益者の利益を保全するために、保有目的を『重要提案行為を行う』に変更する場合がある」と記載している。大豊工業のPBRは0.5倍台にとどまる。

◎マックス <6454> [東証P]

 オフィス用品のホチキスで知られ、建築現場で用いるくぎ打ち機では国内最大手。期初に保守的な利益予想を示す傾向がみられる。27年3月期は連続最高益更新を計画。4月30日の決算発表にあわせ取得総数400万株(自己株式を除く発行済み株式総数の2.22%)を上限とする自社株買いの実施も公表した。鉄筋結束機事業を中心にコンクリート構造物向け工具の販売が好調に推移しており、欧米など海外での一段の成長に期待が膨らむ。同社に対しては米投資会社のバリューアクト・キャピタルが3月12日報告時点で7.31%を保有。保有目的は「純投資及び経営陣への助言または状況に応じて重要提案行為などを行うこと」となっている。

◎プリモグローバルホールディングス <367A> [東証S]

 「I-PRIMO(アイプリモ)」と「LAZARE DIAMOND(ラザールダイヤモンド)」といった2ブランドをもとに、ブライダルジュエリーの企画・販売事業を展開。昨年6月に東証スタンダード市場に新規上場した。26年8月期は最終利益が前期比21.5%増の21億7000万円と連続最高益更新を計画。株価は年初来で4割以上上昇し青空圏にあるものの、配当利回りは4%台と高水準だ。中国本土での収益性が足もとで顕著に改善。貴金属価格の上昇を背景とする値上げ効果の発現も注視される。同社に対しては、村上世彰氏の長男、村上貴輝氏と投資会社MI2(東京都渋谷区)が5月8日報告時点であわせて7.19%を保有。状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為などを行う姿勢を示している。





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