酒井一氏【クリスマスラリー実現なるか、12月相場を展望する】 <相場観特集>



―トランプ政策リスクと日銀の追加利上げ観測、不安要素抱える相場での投資戦略は?―

 週明け25日の東京株式市場で、日経平均株価は午前中に一時700円を超す上昇となったものの、節目の3万9000円台に乗せると戻り待ちの売りが出て伸び悩んだ。NYダウが過去最高値の更新を続ける米国株と比べると、日本株の上値の重さは否めない。円安基調が続くなかで、日銀が追加利上げに踏み切るとの警戒感がくすぶる半面、足もとでは配当再投資を巡る思惑が広がり、自社株買いによる需給期待も継続している。日本株は果たしてクリスマスラリーの様相を呈することとなるのか。この先の相場展望について、水戸証券・投資顧問部シニアファンドマネージャーの酒井一氏に話を聞いた。

●「レンジ内での推移か、米株と比較し割安感強まる」

酒井一氏(水戸証券 投資顧問部 シニアファンドマネージャー)

 この先1ヵ月間で考えると、日経平均は3万8000~3万9000円を中心としたレンジ相場が継続するとみている。全体相場を大きく動かすようなカタリストに欠け、買い上がるにも売り込むにも難しい局面となりそうだ。国内では上場企業の7~9月期の決算が総じて弱い結果となり、業績面で明るい材料が出なかった。政治面では衆院選を通過して自民・公明両党が少数与党となった。キャスティングボートを握った国民民主党の政策に一時的に注目が集まる場面もあったが、少数与党が誕生したこと自体、海外投資家の目からはネガティブに映る話である。一方で、企業側の自社株取得枠は従来に増して一段と拡大しており、良好な需給環境が日本株の下値リスクを低下させる要因となる。米国株と比べて出遅れ感や割安感も強まっている。

 米国ではトランプ氏が次期大統領に就任することが決まった。関税強化策に対して日本株は明確にネガティブな反応をみせているとは言えないものの、輸出関連企業の業績動向に警戒感がくすぶった状況であるのは確かだろう。米国でのインフレ懸念から米金利の上昇が止まらず、最高値圏にある米国株が調整色を強めるリスクにも、なお注意が必要だ。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)については、利下げが見送られる可能性を指摘する向きもある。11月の米雇用統計など一連の経済指標の精査を経て、市場側の見通しが定まることとなるに違いない。12月のFOMCで金融政策が修正されなかったとしても、その先の会合での利下げ期待が続くと想定されるため、米国株への売り圧力はそこまで高まらないのではないか。

 日銀の金融政策決定会合を巡っては、12月か1月の会合での利上げがエコノミストのコンセンサスとなっている。政策金利が0.5%まで切り上がった後、更に政策金利を引き上げるには、政治面で高いハードルを乗り越えなければならない。0.5%までの利上げでいったん打ち止めになるとの見方が強まれば、悪材料出尽くしとなり日本株に浮揚力を与えそうだ。もっとも、トランプ次期政権の関税策を巡る警戒感が台頭するなかで、輸出関連株が手掛けにくいことには変わりがない。米金利の上昇シナリオなどを前提に、銀行株など金融セクターに投資家の関心が集まる展開が続くと考えている。


(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(さかい・はじめ)
2009年水戸証券入社後、リテール営業を経て、11年より投資顧問部にてファンドラップの運用に携わる。24年4月より現職。

株探ニュース


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