桂畑誠治氏【日経平均急落、日米金利上昇で再び波乱局面に】 <相場観特集>



―12月米雇用統計後の米株波乱でセンチメント急低下―

 3連休明けとなった14日の東京株式市場はリスクオフの波にのまれる形で、日経平均株価は一時900円近い急落に見舞われた。前週末10日に発表された12月の米雇用統計では雇用者数の伸びが事前コンセンサスを大幅に上回り、これを受けてFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げピッチが鈍化するとの見方が出ている。前週末にNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに波乱含みの下げとなり、週明けはダウが自律反発したものの依然として先行き不透明感が漂う。東京市場も足もと下値模索の動きに転じており、投資家としても対応に苦慮するところだ。米経済や米株式の動向にも詳しい第一生命経済研究所の桂畑氏に今後の相場展望を聞いた。

●「当面は荒れた値動きも中長期では買い場」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 足もとでは日経平均が3万8000円台前半まで水準を切り下げるなど軟調な地合いとなっているが、当面はスケジュール的にもイベントリスクが意識されるなか、荒れた値動きを強いられそうだ。前週末に開示された12月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数の伸びが25万6000人と事前のコンセンサスを大きく上回ったが、これに伴う米10年債利回りの上昇を背景に米株式市場にはネガティブに作用した。

 今月28~29日の日程で行われるFOMC(米連邦公開市場委員会)では利下げ見送りの可能性が高まった。これについては想定の範囲ながら、今後のFRBの金融緩和スタンスに対する懐疑的な見方が広がったことが、悪材料としてセンチメントを冷やしている。政策金利の年内の高止まりがFF先物に反映されており、従来は3.94%だったが、雇用統計発表後は4.06%に上昇した。FRBの利下げピッチの鈍化が意識されるなか、米株式の相対的な割高感が上値の重石となっている。

 また、バイデン米政権による先端半導体の輸出規制強化が改めて警戒され、米株市場ではエヌビディア<NVDA>をはじめ半導体セクターへの売りが目立つ。東京市場でも米半導体株安を引き継ぐ形で同関連株が売り込まれ、全体指数の下げを助長した形だ。

 もっとも米国の企業業績は良好である。PERの割高感が取り沙汰されるが、これは業績動向に対する不安とリンクされたものではない。あくまでFRBの今後の金融政策の舵取りに対する思惑が主導している。加えて、今月20日からトランプ新政権が発足することで、直近のトランプ氏の相次ぐ過激な発言と相まって、インフレなどに対する警戒感が増幅されるなか、しばらくは不安定な相場環境が避けられそうもない。

 一方、日本株も目先は売り圧力が強まっている。FOMCに先立って23~24日に予定される日銀金融政策決定会合では、見方は分かれているものの、利上げを実施する可能性が高いと考えている。しかし、もともと昨年12月の決定会合で利上げが見送られれば、今月(1月)は利上げに動くというのが市場のコンセンサスであった。そのため、これが改めて売りの材料とはなりにくいが、足もとで新発10年債利回りが1.25%まで上昇するなか、積極的に株を買えるようなムードでないことも確かだ。当面は荒れた値動きが続きそうだが、日経平均3万8000円台近辺は買い下がりで対処して中期スタンスでは報われる公算が大きそうだ。向こう1ヵ月のレンジは下値が3万7500円どころ、上値は4万円前後とみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。


株探ニュース


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