【杉村富生の短期相場観測】 ─DeepSeekショック異聞?



「DeepSeekショック異聞?」

●AI関連セクターの株価には亀裂が入る!

 古来、「株価は天には届かず、地には落ちる」という。この格言は相場の難しさを教えている。投資家心理としては持ち株がどこまでも上がり続ける、と考える。願望に近い。専門家は「絶好の押し目形成」の言葉をよく使う。しかし、これは上昇トレンドが継続している限り、という条件付きである。

 今回のDeepSeek(ディープシーク)ショックはAI(人工知能)関連セクターを直撃した。エヌビディア<NVDA>の時価総額は1日で91兆円が吹っ飛んだ。アリスタ・ネットワークス<ANET>、マーベル・テクノロジー<MRVL>、ブロードコム<AVGO>の株価は1月27日に、17~22%の暴落となった。チャート的には完全に亀裂が入った状況だろう。

 中国のAIスタートアップ企業のDeepSeekが開発したAIエンジン(アプリ)は米オープンAIの「ChatGPT」に匹敵する性能を持っている、といわれている。さらに、開発コストは600万ドルと低いうえに、最先端の半導体ではなくローエンドのH800チップを使用した、と主張している。

 これが事実だとすれば、AI開発に巨額の設備投資は不要になる。極端な話、最先端の半導体はいらない。ただ、エヌビディアの最先端半導体を秘かに手に入れ(アメリカが輸出規制)、オープンAIの情報を盗用したとの疑念が持ち上がっている。それに、アプリのデータは中国に送信される仕組みになっている。

 このアプリはセキュリティに問題がある。とはいえ、株価の値動きとは別の問題だ。再三指摘しているように、相場巧者のドラッケンミラー氏はエヌビディアの持ち株を売り切っているし、ウォーレン・バフェット氏はアップル<AAPL>の株式を大量に売った。現金ポジションを49兆円に高めた、という。

●八潮市周辺では120万人に風呂、洗濯の自粛要請!

 いや~、相場巧者はさすがにやることが素早い。筆者はここ数週間、講演会などを通じ、急落した東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、富士急行 <9010> [東証P]の買いを提唱している。東京電力ホールディングスは昨年4月15日の高値1114.5円が今年1月23日には406円の安値まで売られた。下落率は63.6%となる。

 富士急行の23年8月2日の高値は5820円だ。それが今年1月14日には2083円の安値をつけた。下落率は64.2%である。ファンダメンタルズはこんなに売り込まれるほど悪くない。しかし、株価は下げるときにはトコトン売られる。順張り投資家の存在に加え、政策投資関連の売り玉を場にさらした結果だと思う。

 まあ、「ヘビは木がなくても木に登る」というが、急騰・急落の要因は後講釈が多い。もちろん、「下げの途中で買うな」とか、「落ちる短剣はつかむな」は基本である。これはナンピン買いにもいえる。底打ちを確認してから買う。そうでないと、「やられナンピン、スカンピン」になってしまう。セオリーは「打たれ強くなったところを買う」こと。

 順張りパターンの銘柄では上下水道関連セクターだろう。埼玉県八潮市の道路陥没事故は2次災害に広がる可能性が高まっている。老朽化した下水管の破損が主因だが、周辺の市町の住民120万人に対し、「風呂、洗濯を自粛せよ」との要請が出されている。いずれ、「トイレ制限」の措置が発動されるのではないか。

 上下水道の劣化、耐震化不足はかねて指摘されていたことだ。日本の上下水道の社会資本ストック(再取得価格ベース)は130兆円に達する。しかし、令和7年の概算要求の額は60億円(主に耐震化)にすぎない。あとは自治体にまかせっぱなしだが、悲しいかな予算が乏しい。八潮市のトラブルは氷山の一角だろう。

 上下水道管のクボタ <6326> [東証P]、積水化学工業 <4204> [東証P]、「水のマエザワ」と称される前澤化成工業 <7925> [東証P]、コンサルタントのNJS <2325> [東証P]、日水コン <261A> [東証S]、管工機材のクリエイト <3024> [東証S]、水処理プラントの三機工業 <1961> [東証P]などに注目できる。

2025年1月31日 記

株探ニュース


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