【杉村富生の短期相場観測】 ─トランプ政権は株価を意識、株安を嫌う!



「トランプ政権は株価を意識、株安を嫌う!」

●着々と成果を挙げる棍棒外交?

 相変わらず、トランプ政権の外交・通商政策に振り回されている。交渉の“武器”は関税だ。これを取引材料、脅しに使う。マーケットはトランプ大統領の発言に一喜一憂し、株価指数は乱高下を繰り返している。やはり、こんな局面ではトレンドを読むことが肝要だろう。すなわち、重要なのは相場の基本観(認識)である。

 トランプ大統領が採用しているのは棍棒外交だ。これは彼が尊敬する第26代大統領のセオドア・ルーズベルトが得意とした。要するに、外交・通商戦術である。これに惑わされてはいけない。原則は「大きな棍棒を携え、穏やかに話す(Speak softly and carry a big stick)」とされている。

 したがって、怒っているときは怖くない。やさしく語りかける局面には裏がある。これには警戒を要する。首脳会談では「笑ってごまかす話術」が必要だ。それに、トランプ大統領は株安を望んでいない。NYダウ、 NASDAQ指数が急落すると、必ず過激発言の修正に進む。カナダ、メキシコに対する25%の関税実施が好例ではないか。

 ウクライナ軍事支援の問題もそうだ。レアメタル権益取得の取引材料である。パナマ運河の管理権奪取計画は中国の影響力を薄める作戦だ。すでに、パナマ政府は中国の「一帯一路」プロジェクトからの離脱を表明、パナマ運河の両サイド(バルボア港、クリストバル港)の運営権を香港企業が売却する。

 まあ、物騒な外交作戦だが、棍棒外交が着々と成果を挙げているのは確かである。EU(欧州連合)は今後、125兆円規模の 防衛費の増額を決めた。ドイツは防衛費、安全保障費用を財政債務ブレーキの枠外にするように、憲法改正を行う方針だ。これに他のフランス、イタリア、ポルトガルなどEU諸国は追随するだろう。

●欧州、中国は積極財政にシフト!

 中国は2025年に25兆円の歳出拡大を実施する。トランプ政権の圧力はすさまじいが、各国はそれを財政出動、ないしは妥協によって乗り切ろうとしている。ECB(欧州中央銀行)、FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げだ。各国の金融、財政政策はコロナショックの初期段階に似てきた。まさに、非常事態である。

 日本は長期金利(10年物国債利回り)が1.5%を突破、為替市場では1ドル=147円台の円高になっている。市場環境は悪い。しかし、ズルズルと下げる相場ではない。昨年の8~9月がそうだったように、下値にはアクティビスト(物言う株主)の介入、自社株買い(2月の設定額は2兆円)が入る。

 さらに、安値圏では個人が元気だ。いわゆる、優良株の安いところを買うGARP戦術である。これは「Growth at Reasonable Price」の頭文字を取ったもの。単純にハイテクセクターの買いではない。NIPPON EXPRESS ホールディングス <9147> [東証P]、東京ガス <9531> [東証P]、大林組 <1802> [東証P]などが候補になろう。

 逆行高(暴落日の赤札)の銘柄ではガソリンスタンドと連携、カーコーティング専門店を年間70店ペースで出店、現在の150店舗を2030年までに500店舗にする計画のKeePer技研 <6036> [東証P]に注目できる。5年後の同事業の年商は300億円(現在は130億円)と倍増強を見込んでいる。

 ウッドワン <7898> [東証S]は4ケタに乗せてきた。しかし、PBRはまだ、0.21倍にすぎない。24円配当を行っている。かなり、厳しい道のりだが、PBR1倍だと4701円になる。経営改善中の住友化学 <4005> [東証P]、箱根を開拓するなど積極経営の富士急行 <9010> [東証P]は逆行高をみせている。

 このほか、株価は底値ゾーン、かつ支援材料が豊富な配当利回り5.52%のJALCOホールディングス <6625> [東証S]、同5.19%のタスキホールディングス <166A> [東証G] 、同5.39%のTHEグローバル社 <3271> [東証S]は配当取りと値上がり益の“二刀流”戦術が可能と思う。

2025年3月7日 記

株探ニュース


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