「PFAS」対策が全国で本格化へ、規制強化で大変貌の有望株を追え <株探トップ特集>



―環境相の諮問機関は定期検査義務化を了承、関連銘柄に商機拡大の期待膨らむ─

 環境相の諮問機関である中央環境審議会の小委員会は2月6日、健康への悪影響が懸念されている有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」を水道法上の水質基準に引き上げる報告書案をまとめ、了承された。水道事業者は水質検査やPFASの濃度が基準を超えた場合に改善が求められ、定期的な検査が義務付けられることになり、2026年度から施行される見通しだ。PFASは全国の河川や地下水などから相次いで検出されていることから対策は急務で、水質検査や無害化を手掛ける企業から目が離せない。

●相次ぐ基準超える検出

 PFASは有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称するもので、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)など1万種類以上の物質があるとされる。PFASのなかには撥水・撥油性、熱・化学的安定性などの物性を示すものがあり、そのような性質を利用して撥水・撥油剤、界面活性剤、半導体用反射防止剤など幅広い用途で使用されている。ただ、フッ素(F)と炭素(C)間の結合の強さから分解しにくく、永遠の化学物質と呼ばれ環境残留性や生体蓄積性が問題視されている。

 直近では大阪府枚方市で実施された地下水の調査で19地点から国の暫定目標値(PFOSとPFOAの合算値が1リットルあたり50ナノグラム)を超える数値が出たほか、茨城県水戸市中心部の地下水からは暫定目標値の2倍近い濃度が検出されるなど社会問題となっている。熊本県では菊陽町で台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の国内第1工場が24年末に量産を開始したことを受け、2月下旬に開いた会議で例年実施している公共用水域(河川)の水質測定頻度と項目を拡充し、監視を強化する方針を掲げた。

 規制強化の動きが広がるなか、PFASの検査・無害化やPFASフリー(PFASを使わない)製品を提供する企業は恩恵を受けそうで、株式市場で関連銘柄への関心が改めて高まっている。

●検査・無害化関連

 室町ケミカル <4885> [東証S]は医薬品・健康食品・化学品などを展開しており、そのうち化学品事業では液体処理で使用されるイオン交換樹脂の販売・加工を行っている。水質PFAS対策を巡る喫緊の課題に対し、分解技術・環境修復技術の実用化に向けて、PFAS吸着用のイオン交換樹脂及び無機フッ素の除去や重金属吸着除去用イオン交換樹脂に注力。原水に含まれるPFASの吸着性能を確かめる試験や処理装置の設計・施工まで一気通貫のサービスを提供できることが強みだ。

 ウシオ電機 <6925> [東証P]は1月、PFOS及びPFOAを触媒や添加物を使用せず光を用いて分解・無害化できる技術を開発したことを明らかにした。具体的には、波長172ナノメートルの紫外線を発するエキシマランプを用いた光の力に、OHラジカル、水和電子を加えた3つの力で分解した結果、多量のPFOA、PFOSであっても一定時間で99%を分解できることを確認したという。

 アルコニックス <3036> [東証P]は1月、誰でも簡単に日常生活で使用する水道水の水質を検査できる簡易キットを自社のオンラインストアで販売を開始したと発表。これまで販売していた「水質検査 Aキット」は水道水に含まれている細菌を検査するものだったが、新たに販売を始めた「水質検査 Bキット」は水道水に含まれているPFASを検査できる。

 また、有機フッ素化合物の分析で豊富な経験を持つ環境管理センター <4657> [東証S]、グループ会社が有機フッ素化合物の総量をスクリーニングできる装置を展開している日東精工 <5957> [東証P]、PFOSやPFOAをはじめ各種の分析を手掛ける三浦工業 <6005> [東証P]、イオン交換樹脂を扱うオルガノ <6368> [東証P]、PFAS分析ソリューションを提供する島津製作所 <7701> [東証P]、有機フッ素化合物による地下水汚染の対策を支援する応用地質 <9755> [東証P]なども関連銘柄として挙げられる。

●PFASフリー関連

 製造現場で使用される材料にはPFASが含まれているものが多く、環境負荷の観点からPFASを使わない新規材料の開発が求められている。

 こうしたなか、セントラル硝子 <4044> [東証P]はこのほど、半導体の製造プロセスで用いられるArF液浸レジスト材料である光酸発生剤及び撥水ポリマーのPFASフリー化に成功し、「PFASフリーArF液浸レジスト」の開発・製品化を目指している。同社は開発を進めるにあたり、半導体プロセス分野の世界的な研究機関であるimecと24年10月に共同開発契約を締結しており、今後より一層開発を加速させる構えだ。

 日本化学産業 <4094> [東証S]は24年1月、PFASを含まない無電解複合めっきを開発し、特許を出願したことを明らかにしている。この技術は、一般的に用いられているポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)複合めっきと同程度の撥水性及び摺動性(しゅうどうせい:滑りやすさのこと)を持つ一方で、撥油性はPTFE複合めっきよりも弱いという特長があり、自動車をはじめとする摺動部品への活用に有効な技術だという。

 このほかでは、PFASフリーにつながる最先端半導体向け木質系バイオマスレジストの技術を持つ王子ホールディングス <3861> [東証P]、フッ素系コーティング剤を代替できる撥水撥油コーティング剤を手掛けるレゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]、フッ素を含まないPFASフリーの環境対応型ポリマーを扱う住友ベークライト <4203> [東証P]、PFAS非該当構造のイオン液体技術をもとに高性能帯電防止剤での事業拡大に注力する第一工業製薬 <4461> [東証P]、PFAS非含有の環境配慮型泡消火薬剤を開発済みの能美防災 <6744> [東証P]などのビジネス機会が広がりそうだ。

株探ニュース


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