万博開幕で注目度急上昇、相場復元の尖兵「再生医療関連」に照準 <株探トップ特集>



―トランプ関税に大混乱の世界経済、混迷相場のなか急速人気化―

 トランプ砲に激しく揺れる世界経済だが、もはや暴君にされるがままといった状況だ。株式市場では、それでもなお「トランプ政権の関税政策の影響を受けにくい」銘柄探しに活路を見いだそうとする投資家も少なくない。こうしたなか、ここ急速に投資家の視線が向いているのが「iPS細胞」や「再生医療」分野の銘柄で、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートの承認申請を行ったクオリプス <4894> [東証G]が関連有力株として存在感を示している。他の銘柄にも物色が波及するなか、混迷相場でにわかに動意づく再生医療関連株をチェックした。

●キッカケはクオリプス、ストップ高のセルシード

 大混乱に陥っている株式市場で、再生医療関連株に注目が集まっている。キッカケは8日の取引終了後、大阪大学発バイオベンチャーのクオリプスが、厚生労働省に対して虚血性心筋症による重症心不全を適応とした「ヒト(同種)iPS細胞由来心筋細胞シート」の再生医療等製品製造販売承認申請を行ったと発表したことだった。これが承認されれば、iPS細胞を使った再生医療製品としては世界初とも伝わるだけに期待は大きい。翌9日には、これを材料視する買いがクオリプスに集中することになった。また、東京女子医科大学発のバイオベンチャーで「細胞シート再生医療」の普及を目指すセルシード <7776> [東証G]もストップ高に。更に、多くの再生医療関連銘柄に物色の矛先が向かい、株価を刺激することになった。

  大阪・関西万博がついに開幕したが、ここでの目玉の一つが「iPS心臓」で、開幕前から大きな話題となっていた。実は、このiPS心臓を手掛けたのがクオリプスの最高技術責任者(CTO)でもある大阪大学の澤芳樹特任教授なのだ。同社では、ヒトiPS細胞から作られた心筋細胞を用いてシートを作製し、この「心筋細胞シート」を心臓に移植することで、新しい血管を作り傷ついた組織を修復。これにより、心臓全体の働きを助ける新しい治療を目指すとしている。まさに、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」にふさわしい展示と言えそうで、まだまだクオリプスから目が離せない。

 急速にスポットライトが当たる再生医療関連株について、「言わずもがなだが、この分野では黒字化のハードルが高いだけに、業績面は当面目をつぶる覚悟も必要だ」(市場関係者)という見方もある。事実、再生医療に絡む銘柄や創薬ベンチャーは業績面で赤字を続けているものも少なくはない。大手企業でも、再生医療事業の業績への貢献はたやすくないようだ。英投資ファンドが8日、ロート製薬 <4527> [東証P]に対し不振の再生医療事業への投資が株主価値の重荷となり、主力のアイケアや化粧品事業は大きな潜在的価値を持つにもかかわらず、同社全体のポテンシャルを制限していると懸念を表明したことが、伝わっている。

●ハートシードは万博で情報発信へ

 ここクオリプスやセルシードを中核に投資家の熱い視線が向かうが、心筋再生医療製品の研究・開発を行う慶応大学発のHeartseed <219A> [東証G]にも目を向けてみたい。同社は、iPS細胞から高純度の心室型心筋細胞を作製する技術や移植技術、iPS細胞の作製方法などといった、心筋再生医療の普及にかかせない多くの独自技術を有している。2月初旬には、虚血性心疾患に伴う重症心不全を対象とする、他家iPS細胞由来心筋球「HS-001」のLAPiS試験投与が完了したと発表。予定していた合計10例(低用量群5例、高用量群5例)の投与がすべて完了したという。昨年の12月に入ると株価は急上昇、年を越した1月9日には年初来高値となる3880円まで買われている。その後は一貫して下落し、今月7日には1601円まで売られ直近安値をつけたが、ここを起点に本格的に上値を指向するか注目が集まる。また6月には大阪・関西万博で、厚労省が推進する情報発信プロジェクトに協力し、同社のiPS細胞を用いた心筋再生医療が紹介されるという。日本が強みを持つ医療・ヘルスケア分野の先進技術を世界に発信する予定だ。

●1000円大台乗せをにらむケイファーマ

 また、同じく慶応大学発のケイファーマ <4896> [東証G]は3月21日の取引終了後、同社が推進している亜急性期の脊髄損傷を対象とした再生医療に関する臨床研究について、共同研究先の慶応大学医学部から成果発表があったことを開示し、これを刺激材料に株価が急伸。800円手前だった株価は一気に上げ足を強め、同月26日には1420円まで買われ年初来高値を更新した。しかし、この日を境に一転して急落局面に入り、4月7日には537円まで急降下し年初来安値をつけることになった。ここにきては急速に反転攻勢を強めており、1000円大台乗せをにらむ状況にある。4日には、これまでの研究開発の進捗・成果や今後の事業展開を見据えて、亜急性期脊髄損傷に関する慶応大学との共同研究契約を締結すると発表。実用化に向けて全力で取り組む構えだ。

●リプロセルは“画期的なマイルストーン”

 東京大学・京都大学発の創薬ベンチャーで、iPS細胞関連の研究試薬などの研究開発を進めるリプロセル <4978> [東証G]にも注視。同社は2月3日の取引終了後、米バイオ企業のガメト社が開発しているリプロセルの臨床用iPS細胞を用いた卵子体外成熟技術「Fertilo」について、米国食品医薬品局(FDA)からIND(治験届出)クリアランスを取得したと発表した。これにより、リプロセルの臨床用iPS細胞が米国における第3相臨床試験での初の使用となり、画期的なマイルストーンになるという。この発表を受け株価は翌日に急動意。100円近辺に位置していたものが、ストップ高を交えながら6日には277円まで買われ年初来高値を更新し投資家の熱い視線を引き付けた。その後は調整し、現在は140円近辺に位置している。200円未満の低位株で出来高流動性にも富んでおり、動意しやすいという習性も持つだけに、目先値幅取りを狙った個人投資家などの視線も向かいやすい。今月1日には、免疫拒絶リスクを大幅に削減するHLA(ヒト白血球抗原)ノックアウトiPS細胞の販売開始を発表している。

●コージンB、組織培養事業が絶好調

 コージンバイオ <177A> [東証G]は、組織培養用培地の開発・製造・販売や細胞加工物の製造受託を手掛ける。「組織培養事業」では、日本で細胞治療を受ける外国人患者の増加が継続していることから、細胞加工施設を有する医療機関への細胞治療用の細胞培養用培地の販売数量が増加した。また、国内の再生医療研究の拡大により、自社ブランドKBM製品の販売が増加し、OEM製造の受託売上も増加。加えて、中国をはじめとする、同社が販路を有するアジア地域での再生医療の研究開発や臨床試験が拡大していることも業績に寄与している。25年3月期の連結営業利益は、前の期比43.7%増の8億5700万円を予想している。株価は「トランプ関税」による全体相場の急落にツレ安した格好で、7日には1400円まで下押し年初来安値を更新。押し目買いニーズも強く、現在は1600円近辺で推移し上値をうかがう。

●新事業で再生医療関連事業を開始したJHD

 ジェイホールディングス <2721> [東証S]にも注目してみたい。同社は、フットサル施設運営と産廃処理事業を展開するが、今年1月には、新たな事業として再生医療関連事業を開始すると発表。同事業の推進拡大を目的に千葉県下で医療及び医療関連事業を展開するあすなろグループに属するあすなろと資本・業務提携したと発表。3月には、同事業を担当する連結子会社のアドバンスト・リジェンテックが、細胞培養加工施設を取得することを決議した。細胞培養加工施設「リジェンテック・ラボ」は今年5月の第1次完工後に細胞培養及び加工によるエクソソームの精製及び販売を開始する予定。また、9月の第2次完工後には、再生医療等安全性確保法の規定にもとづき、特定細胞加工物の製造許可の申請を行い、当該許可を取得した後は、エクソソームの精製のみならず、再生医療などを提供する医療機関などからの委託にもとづく体性幹細胞の培養、加工も行う予定だ。

 そのほかでは、今月2日取引終了後にデ・ウエスタン・セラピテクス研究所 <4576> [東証G]がメドレックス <4586> [東証G]と米国で共同開発する、帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)について、FDAに再提出した新薬承認申請書が申請受理されたと発表しており、今後の動向に目を配っておきたい。また、昨年12月にNTTドコモ(東京都千代田区)と再生医療などの認知拡大を目指した協業を開始すると発表したセルソース <4880> [東証P]も注視しておきたい。





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