トランプ関税の激震下で存在感、「業績期待&親子上場」6銘柄選抜 <株探トップ特集>



―イオングループの再編で注目度急上昇、東証の市場改革で解消への潮流は不可逆的―

 トランプ米政権の関税政策と対中強硬姿勢が4月以降の金融市場に激震をもたらした。足もとでは市場の動揺は沈静化に向かいつつあるものの、世界景気の後退リスクが強く意識されており、再び相場が不安定化するシナリオへの警戒が拭い切れていない。こうしたなかで注目を集めやすいのが、外部環境の影響を受けにくく、業績面で安定感の高い銘柄である。なかでも上場する親会社を持つ銘柄に関しては、親会社ないしはファンド勢によるTOB(株式公開買い付け)を巡る思惑が広がりやすく、相対的に堅調な株価パフォーマンスが見込めそうだ。

●少数株主保護へ前進

 投資テーマとしての「親子上場」に対する市場の注目度を高めるうえで、直近で大きな力を発揮したのが、イオン <8267> [東証P]である。同社は2月28日にイオンモール <8905> [東証P]とイオンディライト <9787> [東証P]の完全子会社化を発表。数多くの上場子会社を抱える企業として知られていたイオンの発表は、少なからず市場参加者にサプライズをもたらした。更にイオンは4月11日に傘下のドラッグストア最大手ウエルシアホールディングス <3141> [東証P]について、同業のツルハホールディングス <3391> [東証P]と経営統合したうえで、ツルハHDをイオンが連結子会社とすると発表している。

 これに先立ち、東証は2月4日に「親子上場等に関する投資者の目線」と題した資料を公表した。親子上場を巡ってはかねてから、親会社による影響力の強さゆえ、子会社側の少数株主の利益が損なわれやすいといった問題点が指摘されていた。東証は資料のなかで、投資家の目線と上場企業の取り組みの間に、ギャップが起きやすい具体的な事例を提示。親子上場の状態にある企業の経営陣が少数株主保護の検討などを一段と進められるよう、機運の醸成を図っている。

 東証は今年中に、親子関係または支配的な関係を持つ企業のグループ経営に関して投資家から評価された事例を取りまとめた資料を公表する予定で、今秋以降には開示状況に関するフォローアップなどを踏まえた追加的な施策の検討・実施に乗り出す姿勢を示している。ちなみに東証が昨年10月に実施した「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」(第2期)における説明資料によると、上場子会社数は2024年時点で230社と14年時点の324社から緩やかに減少している。親子上場問題を巡る取引所のアクションに並行して、企業側による親子上場の解消の動きが一段と加速する可能性が高い。

●イオンにはなお多数の上場子会社

 親子上場の解消に舵を切ったイオンだが、それでもなお、食品スーパーの系列上場企業として、傘下に「マルエツ」や「いなげや」を持つユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス <3222> [東証S]、フジ <8278> [東証P]、イオン北海道 <7512> [東証S]、イオン九州 <2653> [東証S]、マックスバリュ東海 <8198> [東証S]がある。ほかにもグループでは金融サービスのイオンフィナンシャルサービス <8570> [東証P]や衣料品のコックス <9876> [東証S]、靴販売のジーフット <2686> [東証S]、コンビニのミニストップ <9946> [東証P]などが存在する。

 上場子会社を多数持つ企業としてはソフトバンクグループ <9984> [東証P]やGMOインターネットグループ <9449> [東証P]の名が挙がる。ソフトバンクGとGMOに関しては、あえて親子上場を維持する企業であると市場ではみなされているが、こうした企業はどちらかといえば少数派であり、全体でみれば親子上場解消の流れが優勢だ。最近ではイオンのほかにも、富士通 <6702> [東証P]子会社の新光電気工業 <6967> [東証P]に対する産業革新投資機構(JIC)のTOBが3月に成立。富士通は同月、電池のFDK <6955> [東証S]の保有分を台湾企業に売却している。日本製鉄 <5401> [東証P]が子会社の山陽特殊製鋼 <5481> [東証P]に対して実施したTOBも同月に成立した。日本製鉄の主要グループ会社をみても、日鉄ソリューションズ <2327> [東証P]や大阪製鐵 <5449> [東証S]、黒崎播磨 <5352> [東証P]、ジオスター <5282> [東証S]といった上場会社が存在する。出資企業を含めると更に数は増える。

 これらの企業にとどまらず、トランプ政権の関税政策の影響を受けにくい内需企業や、業績の展望の描きやすい企業のうち、上場企業の子会社で、一定の流動性を持つ銘柄については、親子上場解消の思惑が付きまとった状態にあることから、波乱相場のなかでも相対的に高いパフォーマンスを示すと期待される。株式市場ではすでに、親子上場の解消によりTOBを受ける可能性がある銘柄を選別して投資するファンドも誕生しており、今後は類似のファンドが次々と組成される可能性がある。このような観点から、安定した業績推移が期待できる上場子会社として6銘柄を選抜し、以下に示していく。

●業績期待&親会社上場の妙味株6選

◎電通総研 <4812> [東証P]

 金融機関や製造業向けのITソリューションのほか、業務効率化を促すERP(統合基幹業務システム)を手掛ける。電通グループ <4324> [東証P]子会社。25年12月期はトップラインが2ケタの伸びで最終利益は連続最高益更新を予想。デジタル社会の進展で良好な事業環境が継続する見込みだ。無借金経営で、27年12月期に連結配当性向50%(25年12月期予想は47.2%)とする方針。なお、電通グループ子会社にはセプテーニ・ホールディングス <4293> [東証S]やCARTA HOLDINGS <3688> [東証P]もある。

◎住友電設 <1949> [東証P]

 住友電気工業 <5802> [東証P]傘下でビルや工場の電設工事を主力とする。住友電といえば、23年に傘下の日新電機とテクノアソシエをTOBにより完全子会社化したことが記憶に新しい。25年3月期の最終利益は連続最高益更新を計画。昨年12月末の手持ち工事高は前の年の12月末に比べ26.6%増の1814億5200万円とあって、堅調な業績推移が見込まれるほか、データセンター向けの環境監視システムの需要拡大も期待される。住友電の子会社としては自動車用防振ゴムの住友理工 <5191> [東証P]も注目されている。

◎PALTAC <8283> [東証P]

 化粧品や日用品、一般医薬品卸で最大手。メーカー約1000社、小売業約400社との取引関係を持ち、安定的に業績を拡大している。25年3月期の経常利益は連続最高益となる見通し。卸売業とあってPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回っている。親会社はメディパルホールディングス <7459> [東証P]。三菱食品 <7451> [東証S]と既存物流拠点の活用や共同配送の推進などで異業種間連携を開始。物流の効率化を通じて収益性向上を図る。三菱食品も三菱商事 <8058> [東証P]傘下の親子上場関連銘柄だ。

◎弘電社 <1948> [東証S]

 電気設備の設計・施工を展開する三菱電機 <6503> [東証P]のグループ会社。送電線の建設・更新も手掛け、データセンターの増設ラッシュは同社の業績拡大につながると期待されている。1月に25年3月期の業績予想を、3月に配当予想をそれぞれ上方修正した。資機材価格の高騰を受けた価格転嫁が進展し、受注状況はなお好調。26年3月期においては豊富な手持ち工事の消化により業績が底堅く推移することが予想される。PBRは0.8倍近辺だ。

◎アレンザホールディングス <3546> [東証P]

 中部地区で有力スーパーを手掛けるバローホールディングス <9956> [東証P]傘下。ホームセンターでは東北・北関東で「ダイユーエイト」、中四国で「タイム」などを展開。ペットショップでは全国に「アミーゴ」の店舗網を構築するほか、「ペットフォレスト」も運営する。26年2月期の売上高は前期比1.1%増の1550億円、最終利益は同5.4%増の22億円となる見通し。ペットショップや資材・工具を取り扱うプロショップで合計12店舗の新規出店を計画。持続的な成長に向けてドミナントエリアの拡大を図る。足もとで配当利回りは3.8%近辺とまずまずの水準だ。

◎田岡化学工業 <4113> [東証S]

 樹脂原料や医農薬中間体、ワニスなどを供給する化学メーカー。住友化学 <4005> [東証P]子会社だが、三菱ガス化学 <4182> [東証P]とともに、スマートフォンのカメラなどに使われる光学樹脂ポリマー原料モノマーを製造する合弁会社を22年に設立した。25年3月期業績に関しては、交易条件の改善を主因に利益見通しを2度にわたり上方修正した。昨年11月の段階で会社側は、樹脂原料の在庫調整一巡後となる26年3月期に業績が回復する可能性を示唆している。

株探ニュース


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