事業規模20兆円強のインパクト、再脚光「国土強靱化」関連が復活高へ <株探トップ特集>



―防災・減災対策は喫緊の課題、不安定相場でも揺るがない息の長いテーマ―

 トランプ米政権の関税政策に対する警戒感が根強く、17日には関税を巡る日米閣僚協議が行われることから積極的には買いを入れにくい状況が続いている。ただ、こうしたなかでも忘れてはならないのが、息の長い物色テーマである「国土強靱化」だ。2024年元日の能登半島地震をはじめ大規模自然災害による被害が激甚化・頻発化しているほか、同年8月に発生した日向灘を震源とする地震では政府として初の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されるなど巨大地震の切迫性が高まっている。今年1月に埼玉県八潮市で道路陥没事故が起きたことからインフラ老朽化への不安感もあり、株式市場では早期の応急対策や 防災・減災対策に携わる銘柄が関心を集めている。

●活躍必至の守護神銘柄

 政府は1日、首相官邸で国土強靱化推進本部を開き、6月をメドに策定する中期計画の素案を公表した。素案で示された324施策のうち、ライフラインの強靱化や地域の防災力の強化など116施策は推進が特に必要だと強調。国などが管理する道路や橋は9万2000カ所を修繕措置の対象とし、老朽化対策の工事を進めて30年度に80%、51年度に100%の達成を目指すとしている。また、上下水道や港湾施設などの耐震化、送電網の整備・強化も加速する構えで、26年度から5年間の事業規模は25年度末までの現行計画(総額15兆円程度)を上回る20兆円強とする方針だ。

 国土強靱化のテーマに乗る銘柄としては、大成建設 <1801> [東証P]、大林組 <1802> [東証P]、清水建設 <1803> [東証P]、鹿島 <1812> [東証P]といった大手ゼネコンに加え、社会インフラの補修・補強を手掛けるショーボンドホールディングス <1414> [東証P]、PC(プレストレスト・コンクリート)橋で豊富な実績を持つ三井住友建設 <1821> [東証P]、トンネルなどの大型土木に強みを持つ大豊建設 <1822> [東証S]、PC工事などを請け負うピーエス・コンストラクション <1871> [東証P]、災害対策工事から既存建物の価値向上まで多彩なソリューションを提供する日本国土開発 <1887> [東証P]、都市土木技術(地盤改良、地中連続壁、薬液注入など)や斜面・のり面対策技術を持つライト工業 <1926> [東証P]など。

 これ以外にも住友大阪セメント <5232> [東証P]や太平洋セメント <5233> [東証P]といったセメントメーカー、建設技術研究所 <9621> [東証P]や応用地質 <9755> [東証P]などの建設コンサル大手、コンストラクション分野に特化したパッケージCAD(コンピューターを使用して設計や製図をするシステム)の開発・販売を行う福井コンピュータホールディングス <9790> [東証P]など関連銘柄は多岐にわたる。

●前田工繊などにも注目

 直近ではウェザーニューズ <4825> [東証P]が3日、経済安全保障重要技術育成プログラムの研究開発ビジョン(第1次)で課題設定された「災害・緊急時等に活用可能な小型無人機を含めた運航安全管理技術」に宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと共同で応募し、採択されたことを明らかにした。複数社でさまざまな運航安全管理システムの研究開発を進めるなかで、同社は25年度末までに「AIリスクアラートシステム」「低高度航空気象観測システム」「低高度4次元高精細気象予測運用化技術」の実用化を目指し、災害発生時や緊急時に活動する ドローンやヘリコプターの安全な運航に必要な新たな航空気象システムの開発の役割を担っている。

 前田工繊 <7821> [東証P]は1日、建築・土木資材や配管資材などを製造・販売する三井化学産資(東京都文京区、前田工繊産資に商号変更)の完全子会社化が完了した。土木資材分野における製品ラインアップの拡充及び事業規模の拡大を図ることで既存事業の強化につなげるほか、新規事業領域として配管資材分野に取り組むことで事業領域の拡大が可能。三井化学産資の持つ樹脂加工技術と、同社の繊維・樹脂加工技術とのシナジーを発揮することで、新たな価値を生み出し、グループの企業価値を向上させる構えだ。

 Liberaware <218A> [東証G]は3月28日、神戸市の協力のもと、TKKワークス(大阪市北区)と共同で小型ドローンを活用した距離計測技術の実証実験を行った。この実証は、下水道管路内の点検においてドローン挿入地点と対象物との距離を測り、下水道管内の状況を把握するためのより高度な情報取得を可能にするもの。この成果を踏まえ、同社は自社の狭小空間専用点検ドローン「IBIS」への応用に向けて開発を進め、下水道点検の現場でより広く活用されることを目指すとしている。

 不動テトラ <1813> [東証P]は3月27日、新造船の浚渫船兼起重機船(押航式)「FT400」の完工式を行った。「FT400」は今後、さまざまな海上プロジェクトへの浚渫兼起重機船の参画に向けて積極的な営業を展開していくとともに、災害発生時において対応が可能な機能を装備することにより、被災地の災害支援活動につなげたい考え。なお、「FT400」は管理計器や通信機器などの設置を行ったうえで、6月には初弾工事(工事の最初の段階や部分にあたる工事)で稼働を開始する予定だという。

 鉄建建設 <1815> [東証P]は3月27日、CalTa(東京都港区)及びマップフォー(名古屋市中区)と独自開発の自動検出システムと可搬式LiDARによるマシンガイダンス技術を共同開発したと発表。この技術は重機の位置や動き、掘削などの出来形をリアルタイムで検出・解析するもので、非GNSS環境下(トンネル、地下空間、屋内などのGNSS信号を受信できない環境)でも、現場状況の正確な把握が可能になる。

●免震・制震も要マーク

 政府は3月31日、南海トラフ巨大地震の新たな被害想定を公表した。専門家らが集まった作業部会でまとまったもので、最悪のケースで約29万8000人が死亡、経済的な被害・影響額は292兆円超に上るとしている。

 官民による減災対策の強化は急務で、免震・制震装置を扱う銘柄からも目が離せない。ブリヂストン <5108> [東証P]、住友ゴム工業 <5110> [東証P]、住友理工 <5191> [東証P]、岡部 <5959> [東証P]、オイレス工業 <6282> [東証P]、THK <6481> [東証P]のビジネス機会が拡大しそうだ。

 直近では靜甲 <6286> [東証S]が9日、静岡県・山梨県を中心に「地震に強い家づくり」を推進するため、商事事業部設備営業部内に新たに「住設営業課」を設立し、住友ゴの制震ダンパー「MIRAIE(ミライエ)」の販売を開始したと発表。設計事務所や施工会社(工務店など)との協力を強化し、地域の住宅耐震化をサポートするとしている。

株探ニュース


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