笹木和弘氏【不安定な相場展開続く、GW明け後の値動きは】(2) <相場観特集>



―トランプ米政権に振り回される市場、円高など警戒材料―

 21日の東京市場は日経平均株価が再び下値を試す展開を強いられた。前週末の欧米株市場はグッドフライデーで総じて休場となったが、手掛かり材料難のなかも外国為替市場で円高が進行したことで、自動車など輸出セクターを中心に利益確定の売りが表面化した。これから国内外で企業の決算発表が漸次本格化していくなか、果たしてマーケットに追い風は吹くのか、それとも逆風に晒されるのか。米国株市場の動向も一段と注目度が高まりそうだ。今後の見通しについて松井証券の窪田朋一郎氏とフィリップ証券の笹木和弘氏の2人にそれぞれ話を聞いた。

●「米国に『ガバナンス危機』の懸念、5月にかけいったん戻り局面も」

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

 米国経済を巡る足もとの状況で気になるのは、サブプライム危機からリーマン・ショックに至った2007年から08年にかけてとよく似た側面があるようにみえることだ。例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)は07年9月18日にサブプライム問題の深刻化を背景に0.5%の利下げを行った。その後、0.25%の利下げを2回行った後、08年9月のリーマン・ショックまで小康状態となった。足もとでも、24年には同じ9月18日に0.5%の利下げが行われ、その後、やはり2回の0.25%の利下げが行われている。

 07~08年はサブプライム問題があったが、今回は米トランプ政権による「米国債・米ドル」への信認問題が浮上したことが背景にあると思う。同政権による海外各国に向けた関税へのスタンスは「租税独裁主義」とも呼べるものであり、米国の政策プロセスに対する不信感を生じさせている。パウエルFRB議長に対する解任騒動も米国の「ガバナンス」に対する信頼を揺るがしかねないものだ。

 更に、米国は夏場にかけ実体経済が悪化しかねない。また、米国の債務上限問題などに絡み、格付け機関による格下げなども警戒されている。サブプライム問題では、FRBによる利下げが効いたが、米国のガバナンス危機に対してFRBによる利下げは効かず、より難しい問題を抱えているとも言えるかもしれない。ここから夏場以降にかけて、どんな推移となるのかを確かめていく必要があるだろう。

 株価面ではNYダウは、5月に向け4万1000~4万2000ドル前後まで戻す局面を想定している。08年も春先以降は、ベア・スターンズショック後に相場はいったん持ち直しており、今回も相互関税一時停止に伴う交渉進展が小康状態となって、同様の動きとなることも予想される。戻り局面があれば「セル・イン・メイ(5月に売れ)」で、売り場となるのではないか。当面の下値メドは3万7000ドル前後とみている。個別銘柄では、生活密着型の企業が見直されるとみており、産廃処理のウェイスト・マネジメント<WM>や飲料のコカ・コーラ<KO>、配車アプリのウーバー・テクノロジーズ<UBER>などが注目されそうだ。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。


株探ニュース


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