セキュリティー新潮流、「顔認証」の社会実装で関連株が本格動意へ <株探トップ特集>



―パスワードが顔に変わる時代、堅牢性と利便性で普及加速局面が目前に―

 我々一人ひとりの顔が「パスワード」になる時代が到来するまで、それほど時間はかからないかもしれない。顔認証技術が、セキュリティーと利便性を両立させる存在として期待を集めている。非接触で瞬時に本人確認が可能なこの仕組みは、空港、決済、公共施設など、あらゆる場面で、手間をかけず、待ち時間などから我々を解放してくれる。既に一部先進的なオフィスや施設では同技術に基づく管理システムも導入されるなど、生活の「当たり前」が静かに更新されている状況だ。今回は株式市場でも改めて注目必至となりそうな「顔認証」関連銘柄にスポットライトを当てた。

●万博会場の施工管理で静かなる脚光

 今月13日から2025年日本国際博覧会、通称「大阪・関西万博」(~10月13日)が始まった。初日は「空飛ぶクルマ」や「ブルーインパルス」が悪天候で飛行が中止になったほか、サーバーの不具合により電子チケットでの入場エラーが生じるなど残念な面もあったが、多くの人々が来場し大賑わいを見せたことで、想定以上に出足好調を印象づけている。この世界的な大規模イベント準備の裏側で活躍していた技術の1つが「顔認証」である。パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]傘下のパナソニックコネクトは、会場の統括施工管理者である大林組 <1802> [東証P]に建設全期間(2年間)にわたり入退場管理システム(顔認証クラウドサービス)を提供していた。

 作業した累計約12万人の工事関係者の累計約300万回にもおよぶ入退場を顔認証で管理し、当初予定していた入場許可証による古典的な運用と比べ、5分の1~6分の1の人員で全体管理が可能となった。また、マスクやヘルメットを装着したままでも認証可能であり、セキュリティーを担保しながら同時に堅牢性や利便性も追求し、リソースの効率化に貢献した。実際にシステムを使用した工事関係者を対象とした事後アンケートでも、満足度を5段階評価で尋ねたところ、「認証スピード:4.7」「認証精度:4.9」と高評価を獲得している。もちろん個人情報としての顔情報に絡んだ管理など諸問題も残されているが、実用面での顔認証の最大の肝である「精度」「スピード」が社会実装に足る水準まで到達したとみてよさそうだ。

●急速に広がる顔認証システムの活用

 実際、その見立てを正当化するかのごとく、交通の領域でも顔認証の活用が始まろうとしている。JR東日本 <9020> [東証P]は4月初旬、ウォークスルー改札の実現に向け、今秋から26年春(予定)にかけて、上越新幹線の改札(新潟駅と長岡駅)で顔認証によって改札通過を判断する実証実験を実施すると発表した。

 顔認証が活躍するのは、何も交通の領域だけではない。従来は熟練技術者の経験が頼りだったのが、城の石垣修復作業だ。しかし、今や顔認証が活用され、修復の姿も様変わりしている。災害で崩落した石を顔に見立て画像データを作成、元の石垣データと照合し、その特徴から本来あった箇所を推定することで、従来よりも特定作業を効率化させることに大きく貢献している。

 このほか、空港などでも顔認証が導入され、今後普及が加速していく可能性がある。入管と税関に顔認証のゲートを設置し、立ち止まることなく通過できるようにするなど、今月から羽田空港のターミナルや関西国際空港、成田空港などで運用が開始されている。株式市場でもこれから更に社会実装が加速する段階にきている「顔認証」関連の銘柄は要注目となりそうだ。

 そうしたなか、NEC <6701> [東証P]は国内・国外の空港に同社の顔認証技術が導入されており、万博においても同技術をバーチャルで体験できる。前述の通りパナソニックコネクトのほか、ソニーグループ <6758> [東証P]のグループ会社ビットキーは、大阪・関西万博のヤマト運輸店舗に展示される「顔認証で解錠する宅配ボックス」へ技術協力している。こういった企業が脚光を浴びやすいが、このほか顔認証を手掛ける中小型株も必然的にマーケットで注目されそうだ。今回はその候補となる銘柄を個別に紹介していく。

●注目しておきたい顔認証関連の有望株6選

◆ELEMENTS <5246> [東証G]~生体認証・画像解析・機械学習技術を活用した個人認証ソリューション、衣食住における個人最適化ソリューション、個人情報を管理するクラウドサービスの開発・提供を行う。3月に三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]傘下で同業のポラリファイを子会社化。4月11日にはLINE Creditが提供するスマホ融資サービス「LINEポケットマネー」にオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」を提供すると発表した。

◆HOUSEI <5035> [東証G]~AI(人工知能)・ITを活用した省力化店舗運営支援サービス「無人店舗ソリューション」を提供。顔認証自動ドア解錠サービス・web会員予約サービス・監視サービス・無人決済サービスなどのソリューションで、多岐にわたる業界の無人店舗運営を実現する。顔認証システムは0.3秒高速・高精度なAI搭載の顔認証端末であり、マスク着用でも認証が可能。

◆ミガロホールディングス <5535> [東証P]~グループのDXYZは、顔認証IDプラットフォーム「FreeiD」を提供しており、同じ顔画像データでも、顔認証エンジンに合わせて顔の特徴量を送信できるシステムであり、複数の顔認証エンジンを利用することができる。自動ドア、宅配BOX、エレベーター、専有部の扉など、あらゆる住宅設備と連携することが可能である。

◆高見沢サイバネティックス <6424> [東証S]~パナソニックコネクトと共同で、大阪市高速電気軌道「Osaka Metro」の130駅に、ウォークスルー型の顔認証改札機を設置。顔認証用カメラで対象者の顔を検知、認識した時点で特徴量データに変換し、認証サーバにあるあらかじめ登録している情報と照合する。

◆セキュア <4264> [東証G]~入退室管理システムや監視カメラシステムに、AI技術を掛け合わせた付加価値の高いセキュリティーソリューションを手掛ける。監視カメラに映った特定の人物を顔認証で検知し、メールやアプリで通知するクラウド型顔認証ソリューション「SECURE FR Cloud」は、小売業界における万引き対策や、老人ホーム、介護施設などにおける徘徊防止に役立つ。

◆ブイキューブ <3681> [東証P]~TOPPANホールディングス <7911> [東証P]のグループ会社であるTOPPANエッジと共同で、工場やプラントの屋外の通用門や工事現場などの屋外・半屋外での顔認証による入退管理に対応した、全天候対応型可動式顔認証システム「CloakOne Gate」を提供する。

株探ニュース


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