「トランプ関税」を商機に変える、コンサルティング関連に熱視線 <株探トップ特集>



―市場規模は年10%以上で成長、企業変革やDXニーズ強く好業績企業も多数―

 トランプ米大統領が4月2日に「相互関税」を発表して以降、関税の影響を見極める動きが続いている。9日に発動した相互関税の上乗せ部分については90日間一時停止したものの、10%の一律関税や自動車などの追加関税は維持しており、氏の不規則発言も相まって先行きの不確実性が強まっている。

 株式市場では、関税の影響を受けにくいとされる内需株へのシフトがみられるが、その内需関連企業も顧客が関税の影響を受けて投資意欲が減退するようなら、影響を受けずにはいられない。そこで、こうした状況をビジネスチャンスにできる銘柄がクローズアップされているが、その一つとしてコンサルティングサービス関連に注目したい。

●生産・流通最適化などのニーズ高まる

 ここでいうコンサルティングサービスとは、企業経営に関する課題解決のために、専門知識と豊富な経験を持ったコンサルタントがアドバイスや支援を行うサービスのこと。コンサルサービスという外部のナレッジを利用することで、社内の人材だけでは難しい企業の抱える課題解決や新たな戦略の構築を図る動きが活発化している。

 関税措置をめぐる日米交渉の先行きはまだ不透明感が強いものの、例えば関税リスクの財務面へのインパクトの試算やリスクを抑えるための生産・流通体制の最適化、取引先の再構築やコンプライアンスの強化、関税政策を踏まえたうえでの戦略立案などコンサルティング会社の活躍の場は多い。そのため、コンサルティング業界は、「トランプ関税」をビジネスチャンスに変える数少ない業種の一つともされている。

●市場は年平均10%以上成長の見通し

 コンサルティング業界の成長に対する期待は大きい。IT専門調査会社IDC Japan(東京都渋谷区)によると、国内ビジネスコンサルティング市場は2023年に支出額ベースで前年比12.6%増の7240億円に拡大。24年も同10.6%増と2ケタ成長になったと見込まれている。

 同社では、国内企業のデジタルビジネス化に向けた需要が牽引し高成長が継続すると予想しており、23~28年の同市場は年間平均成長率(CAGR)10.1%で成長を継続し、28年には1兆1714億円に達すると予測。既存ビジネスの最適化に向けた業務変革支援やAI活用支援などが成長を牽引するほか、サービス単価の上昇も支出額の成長に寄与するとしている。

●中小企業の活用も増加へ

 コンサルティングサービスを活用するのは、大企業ばかりではない。総人口に占める高齢者の割合が3割を超えることで顕在化する「2030年問題」などへの対応はむしろ中堅・中小企業にとってより深刻で、業務効率化の推進支援などのニーズが高まると予想される。

 国も売上高100億円を目指す(100億企業化)中小企業に対して、労働生産性向上や賃上げ促進のために先端設備を導入する取り組みに税制支援や金融支援を行っており、これもコンサルティングサービスの需要増加につながると期待されている。

●コンサルティングサービスの関連銘柄は

 ベイカレント <6532> [東証P]は日系最大級の総合コンサルティング会社。足もとではデジタル技術を活用した経営戦略の立案と高い実行推進力を背景に順調に実績を積み上げており、25年2月期は連結売上高1160億5600万円(前の期比23.6%増)、営業利益426億1500万円(同24.5%増)を計上。26年2月期も売上高1430億円(前期比23.2%増)、営業利益510億円(同19.7%増)と高成長継続を見込む。同社は29年2月期に売上高2500億円を目指す中期経営計画を設けており、コンサルタントの積極採用による案件数の積み上げを計画している。

 野村総合研究所 <4307> [東証P]はコンサルティングから実行支援、システム運用まで一貫したソリューションを提供するのが強み。4月24日に発表した25年3月期連結決算は営業利益1349億700万円(前の期比12.0%増)と2ケタ増益となったが、DXに関連するニーズを中心に公共・民間向けともに受注環境は良好で、26年3月期も同1500億円(前期比11.2%増)と連続最高益更新を見込む。

 ドリームインキュベータ <4310> [東証P]はコンサルティングサービスなどのビジネスプロデュース事業とベンチャー投資事業が両輪で、戦略コンサルと事業創造支援を融合させた独自のアプローチに強みを持つ。足もとでは、クライアントの事業創造ニーズの高まりに加え、積極的なマーケティング活動に取り組んだことでビジネスプロデュース事業が順調に拡大しており、25年3月期第3四半期累計の連結営業利益は1億7300万円(前年同期10億8900万円の赤字)と黒字転換した。通期予想は発表していないが、5月15日に25年3月期決算の発表を予定しており注目したい。

 シグマクシス・ホールディングス <6088> [東証P]は、コンサルティングサービスと投資が事業の両輪で、コンサルだけでなく、事業投資を通じた企業の変革支援を実施する総合的なアプローチが特徴。2月6日には25年3月期連結業績予想を営業利益で54億5000万円から56億円(前の期比32.3%増)へ上方修正したが、旺盛な需要と社内人財の高稼働率を理由として挙げており、26年3月期もこの傾向は継続する見通し。5月8日に25年3月期の決算発表を予定している。

 ライズ・コンサルティング・グループ <9168> [東証G]は「実行支援型コンサルティング」を強みとし、報告書を作成するだけではなく、完全常駐型で施策の実行までを支援している。4月14日に発表した25年2月期連結決算は、人材獲得が好調に推移したこともあり、営業利益19億5800万円(前の期比8.5%増)を計上。また、新規案件獲得が計画よりも好調に進捗しているとし、26年2月期は同22億8600万円(前期比16.7%増)を見込む。4月にはSHIFT <3697> [東証P]と資本・業務提携を締結し相互送客による営業機会の獲得強化を図っており、この貢献にも期待したい。

 山田コンサルティンググループ <4792> [東証P]は幅広い専門領域をカバーする経営コンサルティング大手。4月9日に25年3月期連結業績予想を営業利益で37億3000万円から41億5000万円(前の期比13.3%増)へ上方修正したが、M&Aアドバイザリー事業、経営コンサルティング事業の引き合い・受注が順調としており、26年3月期もこの傾向は継続する見通し。5月8日に25年3月期の決算発表を予定している。

 タナベコンサルティンググループ <9644> [東証P]は、経営戦略やDX、人的資本管理、M&Aなど幅広いサービス領域で支援を行うコンサルティング大手。4月には「中堅企業経営研究所」を設立するなど中堅・中規模企業の更なる成長支援を目指している。2月に発表した第3四半期累計の連結決算は営業利益13億7200万円(前年同期比43.4%増)で着地。25年3月期は同14億8500万円(前の期比47.0%増)を見込んでおり、92%の高進捗率から5月14日に発表予定の25年3月期決算への関心が高まっている。

 船井総研ホールディングス <9757> [東証P]は、中小企業やベンチャー企業の成長支援に強みを持ち、業績アップや成長実行の支援を行う。24年12月期は100億企業化に関連したコンサルティングが年間100社を突破し、連結営業利益も83億2400万円(前の期比14.9%増)と2ケタ増益で着地。25年12月期も89億円(前期比6.9%増)を見込む。

 このほか、デジタル時代における企業変革の支援に特化するエル・ティー・エス <6560> [東証P]、産業再生機構の中心メンバーが立ち上げたフロンティア・マネジメント <7038> [東証P]などにも注目したい。

株探ニュース


本画面にて提供する情報について
本画面に掲載されている情報については、(株)ミンカブ・ジ・インフォノイドが配信業者です。
本サービスに関する著作権その他一切の知的財産権は、著作権を有する第三者に帰属します。情報についての、蓄積・編集加工・二次利用(第三者への提供等)・情報を閲覧している端末機以外への転載を禁じます。
提供する情報の内容に関しては万全を期していますが、その内容を保証するものではありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社及び情報提供者は一切責任を負いかねます。
本サービスは、配信情報が適正である事を保証するものではありません。また、お客様は、本サービスを自らの判断と責任において利用するものとし、お客様もしくは第三者が本サービスに関する情報に基づいて判断された行動の結果、お客様または第三者が損害を被ることがあっても、各情報提供元に対して何ら請求、また苦情の申立てを行わないものとし、各情報提供元は一切の賠償の責を負わないものとします。
本サービスは予告なしに変更、停止または終了されることがあります。

本サービスを提供するのは金融商品取引業者である内藤証券株式会社 (加入協会:日本証券業協会 (一社)第二種金融商品取引業協会)(登録番号:近畿財務局長(金商)第24号)です。