2025年前半の【急騰】材料株 ベスト50 <GW特集>



 今年前半の株式市場はトランプ米政権の関税政策に大きく揺さぶられ、波乱展開を強いられている。年初こそトランプ氏の大統領就任を前に減税や規制緩和などの政策期待から日米の主要指数が高値圏で底堅く推移したものの、その後は関税政策への警戒感が台頭。そして4月2日に米政権が貿易相手国に「相互関税」をかけると発表すると、景気後退懸念が広がり、世界的なショック安を引き起こした。

 日経平均株価は3月26日高値の3万8220円から一気に下げ、4月7日に3万0792円と昨年8月の暴落時につけた安値を下回る水準まで下落。わずか8営業日で7400円強の急落に見舞われた。その後は米国が強硬姿勢を軟化させたこともあってマーケットの動揺は沈静化に向かい、直近では戻り足を強めつつあるが、トランプ大統領の不規則な発言を巡る不信感は拭えず、再び相場が不安定化することへの懸念は燻り続けている。

 今回はこのような相場環境のなかで、今年前半に株価が大きく値上がりした銘柄に注目し、上昇率ベスト50を取り上げた。下表では、5月2日終値の昨年12月30日終値に対する上昇率が大きい順に並べ、その上昇の主因を記した。今年のランキングは東証スタンダードとグロース、名証メインに上場する企業が43銘柄と多くを占めたほか、株価が倍化した銘柄数は21社に上った。

 株価上昇率トップとなったのは、中央紙器工業 <3952> [名証M]。1月31日、ニッコンホールディングス <9072> [東証P]が同社株に対して非公開化を目的に株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表し、買付価格の1株5034円にサヤ寄せする形で株価を切り上げた。企業の再編やM&A(合併・買収)が活発化する中、TOBや非公開化に絡んで株価が急騰したケースが多く、選出リストには中央紙器を筆頭に、テックポイント・インク <6697> [東証G]、カオナビ <4435> [東証G]、ナカヨ <6715> [東証S]など11社が入っている。

 2位と3位には昨年末に株価が2ケタだったエス・サイエンス <5721> [東証S]とTHE WHY HOW DO COMPANY <3823> [東証S]の2社がリスト入りした。Sサイエンスは暗号資産投資事業への参入、WHDCは電気自動車(EV)充電インフラ事業を展開するTerra Chargeの株式取得をそれぞれ発表したことが材料視された。WHDCは低位材料株の強みを発揮して、昨年末に29円だった株価は3月14日に6.5倍の189円まで跳ね上がった。そのほか株価2ケタ銘柄では「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載を解消したキムラタン <8107> [東証S](19位)などが入っている。

 4位にリストアップされた創薬ベンチャーのレナサイエンス <4889> [東証G]は、1月に9回のストップ高を記録する急騰劇を演じた。まず9日に、ライセンス供与先の米エイリオンが外用薬「ET-02」の男性型脱毛症および加齢性脱毛症に対する第1相臨床試験で良好な結果が得られたと発表。翌週16日には、糖尿病患者のインスリン投与量を予測する人工知能(AI)プログラム医療機器について、専門医に対するAI予測の非劣性(同等)が証明されたことを明らかにした。さらに、22日にノースウエスタン大学長寿研究所の日本の研究室を東北大学内のオープンイノベーション内(同社研究室)に開設すると発表。これらが手掛かり材料となり、株価は1月30日に昨年末比8.3倍の2474円まで値を飛ばし、上場来高値を大幅に更新した。

 続く5位にはCtoCメディアプラットフォーム「note」を運営するnote <5243> [東証G]がランクイン。1月14日、アルファベット<GOOG>傘下の米グーグル・インターナショナルと資本業務提携すると発表したことが買い人気に火をつけた。提携を通じてグーグルが6%出資するほか、業務面ではnoteプラットフォーム上でのAI機能開発などで連携する。また、2月12日に「物語投稿サイト」を今春リリースすると発表したことも好感され、株価は昨年末比5.7倍の2909円まで上値を伸ばす場面があった。

 6位のサンバイオ <4592> [東証G]は2月6日、再生細胞薬「アクーゴ脳内移植用注」の出荷のための承認条件に関する第2回目の製造結果を発表。規格試験と特性解析で基準値を満たして適合となったことが好材料視され、連日ストップ高に買われた。直近ではiPS細胞由来心筋細胞シートなどが大阪・関西万博などで脚光を浴びる中、 再生医療関連のテーマに乗る形で4月18日に2478円と約5年3ヵ月ぶりの高値をつけている。

 選出リストの上位には昨年新規上場を果たした銘柄が目立つ。ククレブ・アドバイザーズ <276A> [東証G]が7位、テラドローン <278A> [東証G]が9位、Synspective <290A> [東証G]が10位、Liberaware <218A> [東証G]が11位にそれぞれリスト入りした。成長性などを評価して上場後のセカンダリーで妙味株を狙う動きが顕著にみられ、いずれも今年に入って上場来高値を更新している。

 今年のランキングの特徴として、急騰株リストの常連である好業績銘柄が少ないことが挙げられる。先行き不透明感が強まる中、好業績銘柄を積極的に買い向かう動きは限定的だった。そうした中で健闘をみせたのが14位にリスト入りしたGMOインターネット <4784> [東証P]だ。今年1月からグループ再編に伴うネット基盤事業の承継で、25年12月期の収益が大変貌を遂げる見通しにあることが株価急騰の背景にある。トランプ関税に左右されない内需の好業績成長株としても注目を集めた。


 ●今年前半の株価上昇率ランキング【ベスト50】

  ※5月2日終値の12月30日終値に対する上昇率
   (株式分割などを考慮した修正株価で算出)
    ―― 対象銘柄数:4,299銘柄 ――
   (今年の新規上場銘柄、地方銘柄は除く)

      銘柄名    市場  上昇率(%) 株価 個別ニュース/決算速報/テーマ
1. <3952> 中央紙器   名証M   271  5010 ニッコンHDによるTOB価格にサヤ寄せ (02/03)
2. <5721> Sサイエンス 東証S   252   74 暗号資産投資事業を開始と発表 (03/18)
3. <3823> WHDC   東証S   245   100 上期営業損益が黒字転換し非開示としていた通期予想も営業黒字見込む (04/15)
4. <4889> レナ     東証G   242  1017 米大学との取り組みを材料視 (01/23)
5. <5243> ノート    東証G   209  1581 横浜市計480小中学校のnote開設が株価刺激 (03/27)
6. <4592> サンバイオ  東証G   206  2299 再生医療関連のテーマに投機マネーが集結 (04/18)
7. <276A> ククレブ   東証G   162  3500 上期経常が2.5倍増益で着地・12-2月期も69%増益 (04/14)
8. <6697> テクポイント 東証G   131  2709 台湾企業の完全子会社に (01/16)
9. <278A> テラドローン 東証G   131  6730 ドローン事業の飛躍期待が続く (03/19)
10. <290A> Syns   東証G   130  1251 SMBC日興証券が投資評価『1』、目標株価1200円で新規カバレッジ開始 (04/02)
11. <218A> リベラウェア 東証G   128  1026 地下インフラ点検向け小型ドローン位置測定の実証成功を材料視 (04/11)
12. <5277> スパンクリト 東証S   126   452 
13. <4435> カオナビ   東証G   125  4380 カーライルが1株4380円でTOB (02/14)
14. <4784> GMOインタ 東証P   124  2687 異彩を放つ逆行高で約25年ぶりの上場来高値更新 (04/16)
15. <6715> ナカヨ    東証S   122  2546 あいHDが1株2550円でTOB (02/17)
16. <5161> 西川ゴム   東証S   120  2476 今期経常を一転5%増益に上方修正、配当も152円増額 (02/10)
17. <1491> 中外鉱    東証S   116   69 4-12月期(3Q累計)経常は4.7倍増益・通期計画を超過 (02/14)
18. <4892> サイフューズ 東証G   115   970 TBS「情報7days」での紹介を材料視した買いが続く (02/12)
19. <8107> キムラタン  東証S   107   62 「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載解消 (02/06)
20. <3341> 日本調剤   東証P   103  2925 非公開化に向けた入札プロセス開始報道でコメント開示 (04/16)
21. <4267> ライトW   東証G   101  2178 MBOを発表でTOB価格2179円にサヤ寄せ (03/17)
22. <3137> ファンデリー 東証G   97.7   435 短期志向の資金流入が続く (04/21)
23. <9235> 売れるG   東証G   96.6  1335 『TikTok Shop』運営代行サービスを開始へ (04/25)
24. <6319> シンニッタン 東証S   93.7   401 スパークス系によるTOB価格にサヤ寄せの動き (03/03)
25. <4068> ベイシス   東証G   87.2  1990 株主優待制度を導入 (03/26)
26. <7115> Aパーチェス 東証S   85.6  2183 今期経常は14%増で8期連続最高益、8円増配へ (02/14)
27. <4593> ヘリオス   東証G   82.5   323 NEDO『日本語版医療特化型LLMの社会実装に向けた安全性検証・実証』に採択 (04/23)
28. <9704> アゴーラHG 東証S   79.6   88 今期経常は2.6倍増益へ (02/14)
29. <6957> 芝浦電子   東証S   79.2  5930 台湾ヤゲオがTOB価格5400円に引き上げ (04/18)
30. <3542> ベガコーポ  東証G   76.1  1136 3月度売上高14%増で6カ月連続プラス (04/11)
31. <9425> ReYuu  東証S   74.5   520 11-1月期(1Q)経常は赤字縮小で着地 (03/11)
32. <5246> エレメンツ  東証G   72.5   795 非開示だった今期売上は50%増収で6期連続最高更新へ (02/27)
33. <6648> かわでん   東証S   72.3  4475 今期経常を2.2倍上方修正、配当も110円増額 (02/10)
34. <5337> ダントーHD 東証S   72.1   530 今期経常は赤字縮小へ (02/14)
35. <9070> トナミHD  東証P   70.0  10150 日本郵便によるTOB価格にサヤ寄せの動き (02/27)
36. <8886> ウッドF   東証S   69.7  1717 長谷工がウッドフレンズに対するTOBを発表 (04/10)
37. <9812> テーオーHD 東証S   68.4   411 記念株主優待を実施へ (03/03)
38. <2397> DNAチップ 東証S   67.7  1090 三井化学によるTOB価格1100円にサヤ寄せ (02/05)
39. <4506> 住友ファーマ 東証P   67.1   941 iPS細胞用いたパーキンソン病治験で有効性確認 (04/17)
40. <3692> FFRI   東証G   67.0  3340 石破首相の商品券問題発覚で「高市関連銘柄」に脚光 (03/14)
41. <2998> クリアル   東証G   66.7  5000 不動産特定共同事業法3号4号事業の認可取得へ本申請を実施 (03/31)
42. <7084> スマイルHD 東証G   66.3  1379 今期配当を95円に修正 (02/25)
43. <2656> ベクターHD 東証S   65.8   126 4-12月期(3Q累計)最終が赤字縮小で着地・10-12月期も赤字縮小 (02/14)
44. <3963> シンクロ   東証P   65.7   560 アセット・バリューによる株式買い増しで需給思惑働く (04/10)
45. <3409> 北日紡    東証S   65.1   180 
46. <7273> イクヨ    東証S   65.1  4235 25年3月期に固定資産譲渡益70億6800万円を計上へ (01/17)
47. <5535> ミガロHD  東証P   64.7  2120 10~12月期の営業利益2.7倍に (02/06)
48. <300A> MIC    東証S   62.9  1662 今期経常を35%上方修正、配当も6.4円増額 (02/13)
49. <5482> 愛知鋼    東証P   62.7  8430 豊田織の非公開化報道が刺激材料に (04/28)
50. <5342> ジャニス   名証M   62.0   384 4-12月期(3Q累計)経常が赤字縮小で着地・10-12月期は黒字浮上 (02/10)


株探ニュース


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