最高値更新の金はトランプ発言で乱高下か?!プラチナ・原油は景気後退懸念が圧迫 <GW特集>


  金はトランプ米大統領の就任以降、不法移民の強制送還や米政府連邦職員の大量解雇による労働市場の悪化や関税引き上げによるインフレ懸念を受けて内外で史上最高値を更新した。ドル建て現物相場は3498ドル、JPX金先限は1万5811円をつけた。

 米大統領は就任式の演説で不法移民の取り締まりなどを優先課題に挙げ、「米国の黄金時代が始まる」と表明した。不法移民の強制送還でコロンビアと衝突する場面も見られたが、関税などの報復措置が示唆されると、コロンビアは受け入れに合意した。一方、政府効率化省(DOGE)を率いる実業家イーロン・マスク氏が米国際開発庁(USAID)を閉鎖し、米政府連邦職員を大量に解雇した。この強引なやり方には共和党内から反発の声も出ている。マスク氏は特別政府職員の立場で、5月下旬に130日以内の任期が切れる見通しである。また、米大統領はカナダやメキシコ、中国に対して麻薬の流入阻止に向けて関税を課すことを発表したことに加え、全ての国の米国製品に課している関税の調査を開始し、相互関税を課すとした。自動車関税も発表されたが、4月9日に相互関税について、国ごとに設定した上乗せ部分を90日間停止すると発表し、各国に交渉余地を与えた。ただ、中国に対しては貿易戦争が激化し、追加関税の税率が合計145%になった。中国も米国に対する関税が125%となったが、米国が電子機器に対する関税を一時免除し、米大統領が交渉を示唆すると、中国は一部製品に対する関税解除を検討した。

 関税引き上げを受け、米ミシガン大消費者信頼感指数で1年先の期待インフレ率が6.5%と1981年以来の高水準となり、インフレ懸念が金の支援要因になった。ただ、各国との関税交渉が開始されたことや米中の貿易戦争の緩和の兆しが出たことで金は利食い売り主導の調整局面を迎えつつある。当面は関税の行方が焦点であるが、インフレ懸念に変わりがなければ押し目を買われるとみられる。関税収入で所得税減税が示唆されており、景気見通しも確認したい。米大統領の脅しをかけたのちに交渉を持ち掛ける手法は中東やウクライナの協議、米連邦準備理事会(FRB)に対する利下げ圧力でも使われており、米大統領の発言を受けて乱高下する動きが続くとみられる。

●プラチナや原油は景気後退懸念が圧迫

 プラチナ(白金)や 原油は景気後退懸念が圧迫要因になった。プラチナのドル建て現物相場は約1年ぶりの安値893ドル、ニューヨーク原油は2021年2月以来の安値55.12ドルをつけた。国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しで、米国の関税の影響を理由に多くの国・地域の経済成長率予測を引き下げた。貿易摩擦が悪化すればさらに低下すると警告した。世界経済の成長率予測について、2025年を2.8%、2026年を3.0%とし、1月時点の3.3%から下方修正した。ただ、トランプ米政権が地球温暖化対策から化石燃料生産へと政策転換したことは下支え要因である。

 また、ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は、プラチナが3年連続で供給不足になるとの見通しを示しており、米国と各国の関税交渉がまとまり、不確実性に対する懸念が後退すると、買い意欲が強まるとみられる。原油はイランの核開発やウクライナ停戦の協議、石油輸出国機構(OPEC)プラスの減産縮小の行方も焦点となる。

●投資資金は金ETFに集中

 ニューヨーク市場のETF(上場投信)では、金ETFが安全資産として買われた。SPDRゴールドの現物保有高は、4月29日に947.13トン(昨年末864.77トン)となった。4月16日に957.17トンまで増加したのち、利食い売りが出た。

 29日のプラチナETFの現物保有高は32.49トン(同34.69トン)に減少した。原油ETF(USO)は現物を保有せず、ニューヨーク原油につないでおり、28日時点で1万1446枚買い(同1万1084枚買い)に減少した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは2月4日時点で30万2508枚まで拡大したのち、4月22日時点で17万5378枚となった。

 ニューヨーク・プラチナは4月8日時点で794枚と一時売り越しとなり、22日時点で5677枚買い越しとなった。ニューヨーク原油は1月14日時点の30万6291枚買い越しをピークとして縮小傾向にあり、4月22日時点で17万0955枚買い越しとなった。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)


株探ニュース


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