【植木靖男の相場展望】 ─出処進退を早めるとき



「出処進退を早めるとき」

●一番底を打ち、大勢の下げは終了

 日経平均株価はいよいよ正念場を迎える水準まで回復してきた。3月26日高値の3万8220円からトランプ関税がもたらす世界経済への悪影響を織り込む形で急落。下げ幅は僅か8日間で7400円超に達した。その後、反発に転じているとはいえ、3万8000円処に戻すのに要した日数は実に23日間に及んでいる。要は「下げるは易く、上げるは難し」を地で行く相場であった。

 では、急落相場ではいったい誰が売ったのか。海外投資家が売り、それに同調したのが信用の投げと思惑売りだった。一方、底入れ後に買ったのも、先陣はやはり同じ海外投資家である。

 報道によれば、4月の海外勢は株式や債券を合計で8兆円超買い越したという。米関税政策をきっかけに米国に対する不信感が高まるなか、米国に流入していた投資マネーが日本やその他の国に流出、回帰したという。いつものことながら海外勢の動きは速い。

 日本勢は彼らの後を追うのが精一杯である。なぜか。一つは「相場の天底は理屈では当たらない」ことがある。どうも日本の投資家は理屈で考えるところがある。天底は理屈では判断できないことを肝に銘じることだ。そして、もう一つ、彼らが狩猟民族である一方、日本人は農耕民族であることだ。動きではかなわない。

 では、今後、株価はどう展開するのか。株価は本質的に悪材料を一気に織り込む習性がある。だとしたら、すでに一番底は打ったとみてよい。すでに20%以上反発しているのだ。急落で付けた下値がまだ意識の中にあるため、ほどほどに下げる場面もあろうが、大勢の下げはすでに終わったとみる。

 材料的には、日米貿易交渉で厳しい結果が出る可能性がある。石破首相がいみじくも口にした「国難」である。だが、その際には通常では考えられないような対策が打ち出される可能性に期待したい。仮に野党に引きずられて消費税減税ともなれば、これをカバーするにはインフレ税(物価上昇により通貨の価値が目減りし、政府債務の実質的な負担が軽くなること)しかない。

 となれば、株価や不動産価格などを押し上げることは必至だ。今後の石破首相の政策が株価を決める可能性がある。

●腕の見せ所で狙う株は?

 当面の物色対象はどうか。目下、NT倍率をみると、依然としてハイテク株優位の展開といえそうだが、同倍率の伸びは再び鈍ってきたことがみてとれる。当面は二刀流でいくしかない。

 3月期決算企業の決算発表が概ね終了し、少しずつ先行きがみえてきた。ここでの銘柄選別は難しいところだ。やはり新鮮であるのが望ましい。

 足もとでは好業績であるのに大きく売られて、その修正高をみせているものあれば、まったく新規に上昇に転じているものもある。最近の小型株人気がそうだ。だが、本質的なトレンドはまだ定まっていない。再三指摘するように、石破首相の打ち出す政策次第で大型株相場に急変する可能性も否めない。

 いずれにしても物色の変化も早い。投資家にとっては腕の見せ所といえそうだ。

 個別にみると、いずれ利上げは必然の流れであるから、金融株の三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]だ。業績もよく、買い安心感がある。

 小売りでは、百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]だろう。

 このほか、日用品メーカーのレック <7874> [東証P]に注目したい。そのアイデア商品には驚きを禁じ得ない。業績もよい。

 出来高が少ないのが難点だが、トーヨーカネツ <6369> [東証P]にも妙味がありそうだ。サンリオ <8136> [東証P]と酷似したチャートを描いている。

 そのサンリオは3月25日高値の7311円でダブルトップを形成。大きく下落した後、5月7日安値の5331円から反発に転じている。その修正高はまだ続くのか、注目したい。

 ハイテク系ではNTT <9432> [東証P]が38年前の人気を再現するか期待したい。

2025年5月16日 記

株探ニュース


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