【杉村富生の短期相場観測】 ─ブラックロックが日本市場に強力参入!



「ブラックロックが日本市場に強力参入!」

●国際マネーは「脱アメリカ」のムード!

 アメリカでは国際マネーの資本逃避(キャピタルフライト)が始まっている。ドル安、金利上昇に加え、株価の波乱だ。スコット・ベッセント財務長官は「アメリカ、中国ともに、デカップリングを望んでいない」とコメントしているが、経済的分断は否応なしに進むのではないか。2大経済圏の誕生である。

 もちろん、ドル債の需要は根強い。イギリス、日本が買う。ちなみに、3月末の国別の米国債保有額(米財務省が5月16日に発表)ベスト3は、1位が日本の1兆1308億ドル(前月比49億ドル増)、2位がイギリスの7793億ドル(同290億ドル増)、3位が中国の7653億ドル(同189億ドル減)となっている。

 とはいえ、トランプ関税は国際分業(グローバルサプライチェーン)体制を否定し、ドルの基軸通貨(ブレトン・ウッズ体制)を危うくする。経済的には低生産性、高コスト構造のアメリカ経済圏(日本の輸出企業はアメリカ生産を加速)、および従来の自由貿易体制のその他の国々の経済圏に分断される。企業はその対応が必要になろう。

 機関投資家の投資に際してはこれまでアメリカ市場の1人勝ちだったし、アメリカ一極集中で良かった。しかし、今後はそうはいかない。相対的に欧州、アジア市場が浮上する。運用資産11兆6000億ドル(約1700兆円)を誇るブラックロック<BLK>が好例だろう。日本株を「オーバーウェート」とし、積極的な買いを入れている。

 ブラックロック・ジャパンの保有銘柄は主軸株だ。トヨタ自動車 <7203> [東証P]、ソニーグループ <6758> [東証P]、日立製作所 <6501> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、五洋建設 <1893> [東証P]、TBSホールディングス <9401> [東証P]、南海電気鉄道 <9044> [東証P]など。

●防衛、資源がクローズアップされる!

 ブラックロックは経営改革、流動性を重視する。名義的には主力3ファンド、その他10近いファンドを使っている。エムスリー <2413> [東証P]の場合、12のファンド名が登場、静かに玉を集めている形跡がうかがえる。さらに、ENEOSホールディングス <5020> [東証P]、村田製作所 <6981> 、三井金属鉱業 <5706> [東証P]などを買っている。

 ド真ン中の銘柄ばかりだが、ブラックロックのラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)は最近、ドナルド・トランプ大統領の「MAGA」をもじって、「MEGA(Make Energy Great Again:米国のエネルギーを再び偉大に)」を唱えている。エネルギー分野は無視できない。トランプ政権は前政権と違って、化石燃料重視の政策を打ち出している。

 前述のENEOSホールディングスをはじめ、石油・天然ガス開発のINPEX <1605> [東証P]、石油資源開発 <1662> [東証P]、LNG(液化天然ガス)関連の明星工業 <1976> [東証P]などは要注目だ。日本のエネルギー自給率は15%ほどに留まっており、電力の供給不足に対応するためには、原発の復活は不可欠と思う。

 テーマとしてはやはり、防衛関連セクターだろう。ウクライナ戦争は収束の兆しが見えず、中東和平は遠のくばかりである。トランプ政権はミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」計画に、3年間で約1750億ドルを投じる。日本は地下シェルターを整備する。ドイツは国防費をGDPの3.5%にするとともに、軍事用途のインフラに同1.5%を支出する、という。

 銘柄としては三菱重工業 <7011> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]の“三羽ガラス”のほか、スタンドオフ防衛作戦の中核を担うNEC <6701> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]、三菱重工業とNECが主力ユーザーの日本アビオニクス <6946> [東証S]などに注目できる。

 菱友システムズ <4685> [東証S]、放電精密加工研究所 <6469> [東証S]は三菱重工業が筆頭株主である。このほか、値動きの良さの視点ではスターティアホールディングス <3393> [東証P]、バリオセキュア <4494> [東証S]、シンクロ・フード <3963> [東証P]などに妙味があろう。

2025年5月23日 記

株探ニュース


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