ESG最前線レポート ─「企業もサッカーリーグもサステナビリティ評価」



●気候変動が及ぼす健康被害

 6月1日より「改正労働安全衛生規則」が施行され、職場における熱中症対策が義務化されます。具体的には、熱中症の自覚症状がある人や熱中症のおそれがある人を見つけた場合の連絡体制を整備することや、重症化を防ぐ手順を定めることなどが求められ、対策を怠った場合は刑罰が科されます。

 気象庁の資料によると、平成3年(1991年)からの30年間を基準とした夏季(6~8月)の気温偏差は約2度も上昇しており、今年も5月には真夏日を記録しました。厚生労働省の統計では、昨年、全国の職場で熱中症になった人は1195人にのぼり、10年間で最も多くなっています。まさに、気候変動が健康被害へと影響しており、企業に求められる対策は増す傾向にあります。

●Jリーグの気候変動対策も環境評価の対象に

 このような気候変動に対する対策を行うのは、企業だけではありません。2025年4月、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は「Sport Positive League(スポーツポジティブリーグ、略称SPL)」にアジアでは初となる参画を決定し、リーグ全体でサステナビリティ事業を推進すると発表しました。

 「SPL」は、スポーツを通じた環境サステナビリティの取り組みを数値化し、その進捗や目指すべき方向性をわかりやすく把握できる仕組みの国際的なイニシアチブです。2025年現在、イングランドプレミアリーグをはじめ、ドイツやフランスなど欧州の4つのプロサッカーリーグが参画しており、Jリーグは5番目の参画となります。

 Jリーグ全60クラブが、単に気候アクションに関するスコアや順位を競うだけでなく、ファン・サポーター、メディア、ホームタウン、企業、自治体などのクラブを取り巻く関係者にとって、スポーツクラブの環境への貢献状況や、地域特有の環境課題に関する客観的な情報にアクセスしやすくなります。

 具体的には、気候変動対策にとって重要な12項目の取り組み状況について、試合会場や施設のエネルギー効率、再生可能エネルギーの利用、リサイクルや廃棄物削減の取り組み、ファンや選手の移動に伴うCO2排出量の管理、ホームタウンとの連携や選手などへの環境教育の推進といった多岐にわたる活動の効果をデータとして収集します。その後、「SPL」独自のスコアリングシステムで定量的に効果分析が行われ、総合点を算出。順位表形式で「SPL」からリーグごとにスコアが出され、それを公表することで最善策の共有を促進して、より高い目標を追求する動機付けが仕組みとして備えられています。

 6月頃をメドに、手引書となる「Jリーグ気候アクションハンドブック」を発行し、一般にも公開される予定です。

●包括的な気候変動対応への期待

 弊社では、スポーツファイナンス事業も行っておりますが、Jリーグが企業のESG投資と同じような指標で評価・分析されるのはとても興味深く、注目しています。

 Jリーグは、2030年までにリーグ全体のCO2排出量50%削減を掲げています。Jリーグでは、企業もスポンサーとして各クラブチームを支援していますが、企業とクラブが一体となり、地域を巻き込んで気候変動に対応していくことは、最終的には私たち自身の健康を守ることにつながると言えます。

 「SPL」の順位表を見ながら、どの企業がどのクラブのスポンサーになっているのかに注目するのも、ESG投資の参考になるかもしれませんね。

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2025年5月27日 記/次回は2025年6月28日配信予定)

株探ニュース


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