大塚竜太氏【日経平均3万8000円台回復、夏相場の勝算は?】(1) <相場観特集>



―米中貿易交渉に進展はあるか、為替市場の動向などにも注目―

 9日の東京株式市場は、リスク選好の地合いが継続し、日経平均株価はフシ目の3万8000円台を回復した。米国経済の先行きに不透明感が募るなかも、前週末に発表された5月の米雇用統計は事前コンセンサスを上回る内容で過度な不安心理が後退している。米中貿易交渉進展への期待も背景に、足もとでは強気が優勢だ。また、目先ドル高・円安傾向にある外国為替市場の動向も注目され、これから訪れる株式市場の夏相場の見通しと合わせて、為替の展望についても専門家の意見を聞きたいところ。今回は株式市場について東証証券の大塚竜太氏に、為替市場について外為オンラインの佐藤正和氏にそれぞれ話を聞いた。

●「3万9500円近辺が当面の上値チャレンジラインに」

大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)

 米国では経済減速への懸念が意識されるなか、6日に発表された5月の雇用統計にマーケットの関心が高かったが、非農業部門の雇用者数の伸びが13万9000人と事前コンセンサスよりも強い数字だった。これがポジティブ材料として捉えられNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに上げ足を強めた。米国と中国の貿易摩擦について、ひと頃よりは対立が和らいでいることもリスク選好につながっている。

 きょうロンドンで開催される米中閣僚級会議では、米国側からベッセント財務長官やラトニック商務長官、グリアUSTR代表が出席するが、この結果が注目される。中国のレアアースの輸出規制などが緩めば、これは自動車産業などを中心にメリットは小さくない。目先的には株価にネガティブに作用する話が少なく、外国為替市場でドル高・円安方向に振れていることもあって、きょうの東京市場も買いが優勢となっている。

 今年の夏相場は比較的強い地合いを想定している。トランプ発言に振り回される地合いは続きそうだが、基本的にダウンサイドリスクよりもアップサイドに思惑を外す可能性の方が高い。当面は3万8000円台固めを念頭に置く形で売り物をこなしていく時間帯とみているが、その後は徐々に株価水準を切り上げる流れとなりそうだ。向こう1ヵ月の日経平均のレンジは、イレギュラーで下振れたとして下値メドは3万6000円台後半、上値については3万9500円どころにチャレンジする場面をイメージしている。

 今後のスケジュールとしては今月の東京都議選、そして7月の参院選がひとつのヤマだが、いずれにしても自民党にとっては厳しい選挙となることが予想される。ただ、その政局事情についてマーケットではかなり織り込みが進んでおり、これが改めて株価を押し下げる材料とはなりにくい。自民党の大苦戦は経済政策への催促ともなっており、むしろマーケットには株高方向に作用するケースも考えられる。

 物色対象としては半導体の動きが変わっており、当面は押し目買い対象として有力。アドバンテスト <6857> [東証P]、東京エレクトロン <8035> [東証P]など主力どころを中心に幅広い銘柄にチャンスが出てきそうだ。このほかでは、国内の物価上昇基調が顕著となるなか、中期的には日銀の利上げ姿勢に変化はなく、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などメガバンクの戻り相場に目を向けておきたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。88~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。2000年から東洋証券に入社し現在に至る。


株探ニュース


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