【植木靖男の相場展望】─ 一本釣りで注目される銘柄とは?



「一本釣りで注目される銘柄とは?」

●日本株ジャンプに二つの条件

 日経平均株価は想定外の強さを見せ、3万8000円大台を回復してきた。とはいえ、3万8000円近辺は大きな分岐点であることはいうまでもない。年初来、この水準は上げるときも、下げるときも十二分に投資家に意識されてきたからだ。

 3月26日高値の3万8220円から4月7日安値の3万0792円まで短期間で暴落したことは、投資家の心胆を寒からしめるに十分であった。

 しかし、反転上昇も早く、5月13日に3万8000円大台を回復し、上値を3万8494円まで伸ばした。ただ、そこからの上昇は難しく、この水準が上値の壁であることが意識された。

 折しも、懸案の日米関税交渉はいまだ解決せず、そうこうするうちに海外では中東情勢に不穏な動きが勃発。国内では参院選が刻々と迫ってきている。石破首相が国難と警戒する危機に対して、政府は打ち勝てる景気対策を打ち出せていない。

 仮に株価が急落したら、どのような手があるのか。ちなみに、ブラックマンデーのときは当時の大蔵省が打ち出した特定金銭信託やファンドトラストの決算処理の弾力化方針により株価は立ち直ったが、給付金ごときでは今回の危機には立ち向かえない。

 では、逆に株価が大きくジャンプする条件はなにか。二つの条件が必要だ。一つは、国難に見合う経済対策を打ち出すこと。もう一つは、国内に余剰資金が流入することだ。

 二つめについては、この10年間以上にわたって日銀が供出して米国に渡った膨大な資金が国内に環流することだ。東京証券取引所が発表した投資部門別売買動向(東証・名証の2市場合計)によると、6月第1週(6月2日-6日)まで海外投資家は現物株を10週連続で買い越し、その規模は期間累計で3兆8700億円に達している。世界的にいよいよ資金移動が始まったのではないか。

●中東情勢を背景に、注視怠れぬエネルギー関連株

 当面の株価をどうみるか。短期的には経験則からは6月第3週は苦戦を免れず、事実、足もとで3万8000円を割り込んできている。その後反発が想定されるが、その勢いがどの程度になるかが焦点となろう。

 その意味で、中東情勢の緊迫化は無視できない。原油価格の上昇とバルチック海運指数が同時的に上昇を始めたことは注目に値する。イランがホルムズ海峡を押さえているだけに、わが国への影響は無視できないとみられる。

 このようにみると、一段と石破首相が打ち出す経済対策がどのようなものになるのかが注目される。その内容と規模次第で株価の先行きが左右されそうだ。

 この局面での物色対象だが、上述した二つの条件が整うまでは、これまで通り“一本釣り”での対処が続くことになりそうだ。

 こうしたなか注目されるのは、 エネルギー関連株と 海運株、それに 防衛関連株であろう。海運株と防衛関連株はすでに幾度となく買われてきただけに無理はできないが、エネルギー関連株については今後の中東情勢の成り行き次第でなお活発化するか、目を凝らすことが肝要だ。

 ただ、昔からエネルギー関連は、投機的な売買の対象として祭り上げられることが繰り返されてきた。それだけに高値買いは慎むべきであろう。エネルギー関連の主導株はいまのところ売買高からみてENEOSホールディングス <5020> [東証P]であり、投機的にはINPEX <1605> [東証P]だ。ENEOSホールディングスは75日移動平均線を越えてきた。

 また、一本釣りでは久しぶりに動意づいてきたカバー <5253> [東証G]やテクノプロ・ホールディングス <6028> [東証P]の急動意に注目したい。いずれも好業績だ。

 それと、ここ 不動産株を引っ張る住友不動産 <8830> [東証P]だ。なにやら材料ありきの株価上昇をみせている。三井不動産 <8801> [東証P]や三菱地所 <8802> [東証P]などの値動きからみると、不動産株は気になるところだ。訪日客需要のピークアウトの可能性が報じられたにしては、三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]が堅調な推移をみせており、こちらも目を離せない。

2025年6月13日 記

株探ニュース


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