窪田朋一郎氏【日経平均意外高の真相は、夏相場の展望を読む】 <相場観特集>



―中東の地政学リスクと7月参院選を前に錯綜する思惑の先―

 16日の東京株式市場は日経平均株価が急反発、前週末の地合い悪から立ち直る形で上値を指向した。イスラエルとイランの間での軍事攻撃の応酬が、中東有事として投資マネーの買い気を削ぐ形となり、前週末の欧米株市場は全面安に売り込まれた。ところが、週明けの東京市場では日経平均やTOPIXなど主要株価指数が思いのほか強い値動きを示し、市場関係者を驚かせた。今週は中銀ウィークでもあり、日米をはじめ各国の金融政策の方向性にマーケットの関心も高まっている。ここから7~8月にかけての夏相場の見通しはどうか。松井証券のシニアマーケットアナリストである窪田朋一郎氏に今後の東京市場の展望を聞いた。

●「日経平均4万円指向も中期的には注意必要」

窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)

 週明けの東京市場で日経平均は大幅反発に転じたが、足もと株式需給関係は非常に良好で当面は調整を交えながらも上値指向が続くとみている。イスラエルのイランに対する軍事攻撃は前週末の株式市場でネガティブサプライズとなり、株価が大きく下押す場面を余儀なくされたが、下値に対しては頑強だった。そして、前週末の欧州株市場や米国株市場がリスク回避目的の売りで全面安となったものの、東京市場は中東リスクを欧米株市場よりも先に織り込んでいたこともあって影響は限定的だった。

 きょうの東京市場は、朝方から一転して買い優勢に傾いたが、これは日銀が国債買い入れ減額のピッチを緩めるとの観測報道が好感されたもの。外国為替市場では円安方向に振れており、これも輸出セクターを中心に買いを引き寄せている。更に株式需給関係もひと頃と比べて改善が著しい。個人投資家マネーの回転が効いており、直近の店内信用評価損益率はマイナス4.4%台まで改善している。一方で、信用買い残高は3000億円あまりにとどまっており、4月初旬の暴落前の信用買い残が3400億円前後であったことを考えると、まだ買い余力があると判断される。

 外国人投資家の日本株選好も続くなか、向こう1ヵ月でみた日経平均の上値は4万円大台近辺への戻りが可能とみている。ただし、中期的には波乱含みの要素を内包しており、7月20日に予定される参院選投開票の前後に全体指数が崩れる可能性があると考えている。企業業績もこのころにはトランプ関税の影響を織り込み、下方修正の動きが相次ぐケースが想定され、全体相場の重荷となりそうだ。その場合、3万6000円近辺の深押しもあり得る。したがって、当面は強気対処で問題ないが、7月に入ってからは保有ポジションを徐々に軽くしていくスタンスで臨むのが良策と思われる。

 当面の物色対象としては、 防衛関連と 半導体関連の押し目を丹念に拾っていくのが有効であろう。防衛関連では株式需給の締まっているIHI <7013> [東証P]を筆頭に川崎重工業 <7012> [東証P]、三菱重工業 <7011> [東証P]を引き続きマークしたい。また、半導体関連ではディスコ <6146> [東証P]、アドバンテスト <6857> [東証P]のほか、ソシオネクスト <6526> [東証P]などにも上値期待がある。なお、7月中旬以降はこうした銘柄群に買い疲れ感も生じるため、任天堂 <7974> [東証P]やサンリオ <8136> [東証P]などのIP関連株に資金シフトしていくのも一法となる。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。

株探ニュース


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