桂畑誠治氏【波乱展開で一時4万円台割れ、下値リスク再燃か】(1) <相場観特集>



―米国雇用統計発表を受け、欧米株全面安でリスクオフ―

 4日の東京株式市場は、リスクオフの流れが加速し日経平均株価は寄り後早々に4万円大台を割り込んだ。前週末に発表された7月の米雇用統計が事前コンセンサスを下回ったほか、5月と6月の統計について大幅に下方修正されたことで、米経済への懸念から欧米株が大きく売り込まれ、その流れが東京市場にも波及した。ただ、売り一巡後は下げ幅を縮小し4万円台を回復して着地している。米経済への警戒感が高まるなか、相場の上昇トレンドにも影を落とすことになるのか。それとも、足もとの押し目は絶好の買い場となるのか。投資家も思案のしどころである。今回は第一生命経済研究所の桂畑誠治氏と、内藤証券の田部井美彦氏の2人に意見を聞いた。

●「下値限定的で押し目買いの機をうかがう」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 足もとでにわかにリスク回避ムードが広がり、日経平均株価は大きく下値を探ったが、今回の波乱含みの下落はそれほど持続的な下げにはつながらない可能性が高く、押し目買いを念頭に置き冷静に対処したい。7月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数がコンセンサスを小幅に下回っただけだったが、5月、6月分が大幅に下方修正されたことがネガティブサプライズとなり、これを受けて欧米株市場でやや狼狽的な売りを誘発した。また、クグラーFRB理事が任期途中に辞任することを発表し、これも不透明材料として買い手控え感を助長した面があるようだ。

 ただ、5月と6月の非農業部門の大幅下方修正(25万8000人減)については、民間企業に加えて、州地方の教員(公務員)の大幅下方修正(10万9000人減)による部分が大きく反映されたもので、やや特殊な背景といってよく、これをもって米国がリセッションに近づいているという見解は妥当とはいえない。7月の米失業率は4.2%で、6月からやや加速したとはいえ、昨年のような速いペースで上昇していないうえ、依然低い水準にとどまっている。また、7月の労働時間は増加し、平均時給も加速するなど、雇用統計は大きく取り沙汰されるほどの悪い内容ではなかった。週間の新規失業保険申請件数も、ここまで急速に減速した形跡は認められない。一方、フェドウォッチでは9月の利下げ観測が8割程度まで上がっており、この利下げ期待が米国株市場を下支える可能性が高そうだ。ミクロ面に目を向けると、企業の決算発表は米国ではハイテク中心に比較的良好ともいえる。トランプ関税の影響が今後どう影響するかだが、現時点で企業のファンダメンタルズ面からは株価下落を肯定するような背景には乏しいといえる。

 東京市場でもトランプ関税による企業業績への警戒感は拭い切れないものの、米株市場が堅調であれば下値を大きく売り込むような局面は見込みにくい。向こう1ヵ月の日経平均のレンジは下値が3万9000円近辺、上値は4万2000円前後とみている。物色対象としては、輸出セクターはやや逆風が強く、半導体製造装置関連の戻り余地は限定的で自動車も関税問題が尾を引くなか、見切り発車の買いは入れにくい面もある。他方、内需の不動産や建設はインバウンド効果なども考慮して、相対的に優位性を発揮しそうだ。


(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。


株探ニュース


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