心筋シートの承認申請を契機に再脚光、「再生医療」関連の出番到来へ <株探トップ特集>



―関西万博でも注目浴びた「ミニ心臓」、人類の夢を乗せ新たな領域に踏み込む―

 再生医療に改めてマーケットの注目度が高まっている。失われた細胞・組織・臓器の機能を甦らせる、まさに人類が移植医療の先に夢見ていた分野であるが、 iPS細胞や幹細胞技術の進展により、いよいよこれらが現実段階へと移行しつつある。世界市場は年平均2ケタ成長が予測され、製薬大手やバイオベンチャーが虎視眈々と商機をうかがっている。投資家目線としては、バイオ関連は投資リスクが相対的に大きいことは確かだが、大きな値幅効果が魅力であることもまた事実であり、今回は心筋シートをはじめとした 再生医療関連にスポットライトを当ててみる。

●万博でも話題となった「ミニ心臓」

 さまざまな困難を乗り越え大盛況となっている大阪・関西万博だが、18日に同イベントの入場券販売が1866万枚に達したことが伝えられた。これは、黒字化目安として当初設定されていた数字を達成したことを意味し、今後は目標の2300万枚に向け集客に更に邁進する構えだ。この万博において開幕前から一つの見どころとして注目されていたのが、iPS細胞から作った「ミニ心臓」であった。万博に足を運んだ投資家の中には、実際にその拍動する様子を目にした人もいると思われる。

 そうしたなかiPS細胞を用いた治療に関して、8月に入って新たな治験結果が公表された。具体的には、「虚血性心筋症」の重症患者8人に対して、健康な人のiPS細胞から作製した心筋細胞をシート状に加工し、心臓に貼り付けるというものだ。ちなみにこの病気は、「動脈硬化や血栓で心臓の血管が狭くなり、心臓に酸素・栄養が行き渡らず、運動やストレスで前胸部などに痛み(心臓の痛み)、圧迫感といった症状」を生じるものだ。

 同治験は2020年から23年に大阪大学などのチームによって同大学及び九州大学などの病院で実施され、全員の重症度が改善したとの良好な結果を得た。うち4人は通常の活動では症状が出ない状態まで改善するなど、著しい成果を見せたようだ。心臓移植や人工心臓に頼らずとも、効果的な治療ができる可能性が確認されたことは、人類全体にとっても希望の光となる。ちょうど7月末には、京都大学発のスタートアップが同じく心臓の難病である「拡張型心筋症」に関するiPS細胞を用いた臨床試験(治験)を始めたと発表があった。脳と同様にまさに人間の命そのものと言っても過言ではない、心臓を巡る研究が加速している。

●学会シーズンの秋はバイオ株が活躍の季節に

 目下、夏枯れ相場とは程遠く、日経平均株価は24年7月につけていた最高値を更新し、4万3000円台後半まで上昇するなど指数自体は非常に好調だ。夏が過ぎれば、次は学会シーズンの秋となり、例年のようにバイオ株などに関心が向かう可能性がある。その先取り的な意味でも、再生医療関連の銘柄リストは改めて押さえておきたい。

 特に心筋シートは業界の関心も高い。そのほか、細胞シートや心筋細胞、再生医療の開発に不可欠な培地、製法開発などをサポートする関連企業に注目だ。

●再生医療をテーマに目が離せない6銘柄

◆クオリプス <4894> [東証G]~ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を目的に設立された大阪大学発のベンチャー。前述の大阪大学などのチームによる治験では同社の製品が使用されている。4月には厚生労働省に対し、再生医療等製品製造販売の承認申請を行っている。

◆朝日インテック <7747> [東証P]~血管内カテーテル治療を中心とした医療機器などの開発・製造・販売を行っており、循環器系カテーテル治療に使用されるPCIガイドワイヤーはグローバルトップシェアとなる。同社は22年4月にクオリプスと再生医療の新たな治療技術の開発に関する共同研究契約を締結しており、心不全を含む循環器疾患に適応する新たな再生医療の事業化を通じた医療革新を目指している。

◆セルシード <7776> [東証G]~細胞シート工学という日本発の革新的再生医療技術を基盤としてさまざまな細胞シート再生医療製品を開発している。細胞シートとはヒトの細胞を採取しシート状に培養して作製した薄い膜で、これを患部に貼ることで細胞や臓器の再生を図る。細胞シート工学を駆使して、角膜、心筋、歯根膜など幅広い領域で治療法の開発や研究が進められている。

◆Heartseed <219A> [東証G]~心筋再生医療の実現化を目指して、15年に設立されたバイオベンチャーで、iPS細胞から高純度の心室型心筋細胞を作製する技術、移植技術やiPS細胞の作製方法など、多数の独自技術を有する。同社の他家iPS細胞由来心筋球「HS-001」を心臓の心筋組織内に投与する第1/2相治験は、全10例の患者投与が1月末に完了している。9月以降の主要学会において治験施設の責任医師による発表が注目される。

◆コージンバイオ <177A> [東証G]~再生医療や免疫療法の研究用途で使用される無血清培地をはじめとする組織培養用培地を開発、製造・販売している。18年に味の素 <2802> [東証P]との合弁会社「味の素コージンバイオ」を設立しており、臨床現場で使用できる培地を生産できる環境を整備した。心筋シートを培養する際には、細胞を育てるための専用の液体である培地が用いられるため、関連銘柄の一角に位置付けられる。

◆住友ファーマ <4506> [東証P]~同社と住友化学 <4005> [東証P]によって設立されたS-RACMOでは、製法開発や薬事対応などをサポートするとともに、治験製品及び商用製品の受託製造を手掛けている。iPS細胞に加え、ES細胞や体性幹細胞、体細胞など幅広い細胞種を対象とし、自家細胞及び他家細胞のいずれにも対応。そのほか、ゲノム編集、遺伝子改変細胞や遺伝子治療などの各種製品、技術についても順次取り組む予定だ。

株探ニュース


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