働く人の自発的行動を促進、「コーチング」関連が活躍のステージへ <株探トップ特集>



―事業環境の変化に対応する人材を育成、サービス提供会社や研修提供会社に注目―

 さまざまなメディアで「コーチング」という言葉を見聞きすることが増えてきた。ビジネスにおける目標達成の手法の一つであり、管理職やリーダーのスキルアップや従業員の主体化などを目的に、大企業を中心に社員研修の一環として導入するケースが増加。また、さまざまな分野で人手不足が深刻化するなか、 人材のパフォーマンスの向上や離職率の低下に効果があるとされることから、新入社員研修などで活用されることもある。

 とはいえ、日本ではようやく普及し始めた手法であり、コーチングを手掛ける企業も多くはない。それだけに今後の成長性が期待でき、関連銘柄には注目が必要だろう。

●「コーチング」とは

 国内コーチング大手のコーチ・エィ <9339> [東証S]によると、「コーチング」とは、「対話を通して、相手(コーチングを受ける人)の目標達成に向けた能力、リソース、可能性を最大化するプロセス」のこと。スポーツの分野などで指導者が選手を教え導く「ティーチング」と混同しがちだが、コーチングは対話を通じて対象者自身が答えを見つけ出し、自律的な成長を促すことを目的としているところに違いがあり、自発的な行動の促進やモチベーションの向上といった成果につながるという。

 日本のビジネスシーンでは、管理職研修の一環として2000年代前半から徐々にコーチングが活用されるようになった。国内の市場規模の最新データは見当たらないものの、コーチング発祥の地である米国のコーチング市場は22年時点で152億ドル(2兆3000億円)とされ、なおも成長を続けていることから、日本でも市場の拡大が期待されている。

●世界的大企業もコーチングを導入

 その米国では、1990年代から急速にコーチングが普及し始めた。現在では「個人のパフォーマンス向上」を主な目的として、企業の経営者がコーチングを受ける習慣が一般的となっており、アルファベット<GOOGL>やメタ・プラットフォームズ<META>といった世界的大企業の経営者もコーチをつけている。

 一方、日本では「目に見える結果がすぐに得られない」というデメリットや、コーチングの価値に関する理解不足、外部からのサポートを良しとしない経営者が多いことなどが障壁となり、導入がなかなか進まなかったという経緯があった。しかし、グローバル化など目まぐるしく変化する事業環境の変化に対応するためにコーチングを導入するケースが徐々に増加。コロナ禍を経て自律的なマネジメント層を求める企業が増えたことも、導入に拍車がかかる要因となっている。

●コーチングを主力事業とするコーチエィとビジコーチ

 こうした状況を受けて、日本でもコーチングのベンチャー企業が多く立ち上がってきているが、上場企業はまだ少ない。その分、知名度などで優位性を発揮できると考えられる。そこで今回は、ビジネスコーチングを主な事業とする企業を中心に、マネジメント研修を手掛ける企業などに注目してみた。

 コーチング関連銘柄の代表格は、前述のコーチエィだろう。経営層を対象とした「エグゼクティブ・コーチング」、経営チームを対象とした「DAIBE」、アッパーマネジメント及びミドルマネジメント層を対象とした「DCD」、全社員を対象とした「3分間コーチ」の4つを中心に国内外でコーチングサービスを提供しており、企業の組織変革支援に強み。また、コーチング人材開発ビジネスも展開している。6月中間期連結決算は、営業利益3800万円(前年同期比8.3%減)となったが、一部の大型案件でプログラム受講者選定などの調整に時間を要し、プロジェクトの開始が遅れたことなどが要因。ただ、計画通りの着地としており、25年12月期通期営業利益予想は1億6000万円(前期比3.1%増)の従来見通しを据え置いている。

 また、ビジネスコーチ <9562> [東証G]は1対1型サービス・1対n型サービスという2つの柱を軸に、標準的なパッケージを用意しつつ、柔軟なカスタマイズによるサービス提供を行っているのが特徴。エグゼクティブ・コーチングなどビジネスコーチングを中心に、組織開発コンサルティング、研修などを展開している。第3四半期累計(24年10月~25年6月)連結決算は、営業利益9000万円(前年同期比3.0倍)と大幅増益で着地。今月にはAIを活用したジョブ型組織の基盤構築・運用サービス「Job-Us」を提供するJob-Us(東京都港区)と資本・業務提携契約を締結したと発表しており、相互送客などによる事業拡大を狙う。なお、25年9月期通期では営業利益1億2000万円(前期比50.2%増)を見込む。

●リクルート、インソースなども関連銘柄として注目

 リクルートホールディングス <6098> [東証P]は、人材育成や組織開発を行う傘下のリクルートマネジメントソリューションズがコーチングサービスを提供している。360度評価を活用した管理職向けコーチングや実践支援コーチング、エグゼクティブ・コーチング、リーダー・マネジメント層向けコーチングなどさまざまなサービスをこれまでに1万人以上に対して実施。また、部下との1on1など職場でのコーチング実践を支援するワークショップも展開している。

 TWOSTONE&Sons <7352> [東証G]は、企業とフリーのITエンジニアをマッチングするサービスが主力。昨年7月には、転職支援やプログラミングサービスなどを展開する100%子会社のBranding Careerが、キャリアコーチングサービス「career boost」の提供を開始したと発表した。AI時代に求められると考えている「人間力」を言語化し、ビジネスシーンにおいて市場価値を高めるために必要な「思考力と実行力」を鍛えることができるとしており、若手から管理職層まで幅広くキャリアコーチングを展開している。

 インソース <6200> [東証P]は、講師派遣型研修や公開講座のテーマの一つとして、さまざまなコーチング研修を展開している。単にコーチングの指導理論を伝えるのではなく、実践的なロールプレイングを通じて自分の所属する現場でどのように落とし込むかを体得できるプログラムになっているのが特徴で、部下指導・離職防止領域のなかでも主要なサービスとなっている。

 このほか、英語学習者を支援するコーチングサービスを提供するプログリット <9560> [東証G]、コーチングなどを活用したキャリア自律支援サービスを提供するジェイック <7073> [東証G]、コーチングではないものの、独自のマネジメント理論「識学」に基づく経営層向けコンサルティングを行う識学 <7049> [東証G]、組織人事コンサルティングの一環として、モチベーション向上や組織変革を目的とした研修を行うリンクアンドモチベーション <2170> [東証P]なども関連銘柄として注目したい。

株探ニュース


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