大化け株の鉱脈を掘り起こす!「国土強靱化・高配当材料株」特選5 <株探トップ特集>



―下水道インフラ関連で火がついた株高火薬庫、次に燃え上がる国策銘柄はこれだ―

 週末5日の東京株式市場は日経平均株価が続伸しフシ目の4万3000円台を回復した。ただ、朝方は600円以上の上昇をみせたものの、4万3000円台ではハイテクセクターを中心に戻り売り圧力も強く、その後は伸び悩み4万2000円台に押し返される場面もあった。米ハイテク株高の流れを引き継ぎ、半導体関連が買われ全体相場を牽引するのがこれまでのパターンであったが、半導体の主力銘柄については上値も重く、総花的な買いが続かないのが現状だ。

 他方、ここ最近の東京市場では内需系の銘柄に強い動きが目立つ。この日は自動車やハイテクが買い戻されたが、むしろ投資マネーの視線は押し目を形成している建設などの内需株に向いている。一方、高値警戒感の漂う現在の市場で重要なアドバンテージとして注目されているのが企業の株主還元姿勢であり、事実、配当利回りの高い銘柄に好パフォーマンスが観測される。そうした状況を考慮して、今回の特集では、国策の一丁目一番地といっても過言ではない 下水道や道路インフラをはじめとする 国土強靱化をテーマとした関連有力株を選抜、更に高配当利回りでインカムゲインの観点からも脚光を浴びる銘柄に照準を合わせてみる。

●50~60年の時を経て爆発的な更新需要発生

 トランプ関税の影響や対中輸出規制の影響などで半導体などハイテクを中心とする輸出セクターには逆風が意識されている。しかし、内需系銘柄はその外憂に悩まされることがない。財政出動などを背景とした国策推進の思惑に乗る社会インフラ関連などは、むしろ収益機会が高まっている状況だ。今年1月に埼玉県八潮市の県道交差点で起こった大規模な道路陥没事故は日本中を震撼させたが、対策を講じなければこうした事故が今後多発する可能性は非常に高く、政府としても緊急課題として最優先で取り組む必要性に迫られている。

 道路やその下を走る上下水道、あるいは橋梁といった社会インフラは今から50~60年前の高度経済成長期に整備されたものが多い。そのため現在、深刻な老朽化問題に直面している。その観点では、八潮市の道路陥没事故は氷山の一角である可能性が高いことになる。言うまでもなく交通インフラやエネルギーインフラは、我々のリアルな日常空間と同化しているものであり、そこに崩壊リスクが生じれば国民の生命の営みにかかわってくる。したがって老朽化に対応した更新需要が、国家主導で今後本格化してくることは自明といってよい。建設経済研究所の試算では2025年度の建設投資は75兆4500億円と24年度比で2.5%の伸びを見込むが、26年度については今年度比5.0%増の79兆2100億円と伸びが加速する見通しだ。

●30年度までに国土強靱化で20兆円の市場

 政府が21年度から25年度まで集中的に取り組んでいる「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」では対策数は123に及び、追加的に必要となる事業規模は約15兆円をメドとしている。そして23年6月に「改正国土強靱化基本法」が成立し施行された。これによって「5か年加速化対策」の後継となる「国土強靱化実施中期計画」策定を法定化し、強靱化の実施計画が切れ目なく策定されることで、継続的かつ安定的に国土強靱化の取り組みを進捗させることが見込まれる状況となった。

 そして今年6月には「第1次国土強靱化実施中期計画」が閣議決定された。これは近年、激甚化・頻発化している自然災害などの教訓を踏まえ、国民を守るための国土強靱化施策を加速化させていくことを標榜するものだ。この実現に向けて行う施策として「防災インフラの整備・管理」「ライフラインの強靭化」「デジタル等新技術の活用」「災害時の官民連携強化」「地域防災力の強化」の5項目、全326施策を策定している。

 第1次国土強靱化実施中期計画では26年度から30年度までの5年間におおむね20兆円あまりの事業を計画している。その内訳としては「防災インフラの整備・管理」に約5兆8000億円、また、「交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化」に約10兆6000億円の事業規模を予算として組んでおり、この2つの項目に主眼を置いていることが分かる。金額的にもかなりのレベル感で国土強靱化が推進されることに相違なく、これに関連して活躍の機会を獲得した企業は業績面でも大きな恩恵を享受することになる。

●高配当利回りは材料株相場でも重要ポイントに

 国土強靱化のテーマを底流に下水道分野の予防保全や更新需要でビジネスチャンスを捉える企業が株式市場で集中人気となり、既に大化け株がいくつも輩出されている。しかし、需給思惑が先に立ったモメンタム相場の典型で、短期急騰した反動で急落するケースも当然ながら多くなっており、投資家サイドとしては注意が必要となる。その際、投資戦略上ひとつの有効なサポートとなるのが、配当利回りである。建設セクターには配当利回りの高い銘柄が数多く存在している。

 今のような中小型材料株が躍動するような地合いにあっても、同じ空間で高配当株への人気が色褪せる気配はない。例えば株価のキャピタルゲインを取ることだけに気を取られると、逆目を引くケースも少なからずある。キャピタルゲインは保証されたものでは全くなく、損失を被るリスクと常に隣り合わせだ。しかし、株価の値動きを敢えて追求しないという考え方もある。企業の株主となることで配当を得るという権利は、当該株式を保有するすべての投資家に付与されるもので、これはほぼノーリスクである。更に配当利回りの高い銘柄は、株価の下支え効果も発揮されるケースが多くみられ、テーマ物色の流れにあってもこれは大きなアドバンテージとなり得る。

 今回のトップ特集では、下水道インフラ関連株の物色人気を契機にがぜん注目度を高めた建設セクターの中から、配当利回りが高く中期投資に耐え、なおかつ短期間で株価の変身妙味も内在させる5銘柄を厳選エントリーした。

●株価変身DNAを持つ国土強靱化・高配当株5選

◎淺沼組 <1852> [東証P]

 浅沼組は関西を地盤とする中堅ゼネコンであり、民間建築で強みを発揮するほか、官公庁案件でも優位性がある。海外ではシンガポールを拠点にアジア地域に展開を図っている。また、土木工事分野での実績は高く、高速道路や上下水道施設に関する受注獲得が進んでいる。デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した生産性向上で労働力不足への対策も入念だ。業績は25年3月期に営業7割増益と急拡大したが、26年3月期は前期比2%増の70億3000万円と保守的ながら増益を確保する見通し。配当性向70%以上とする株主還元を掲げ、これに準じる形で今期年間配当は41円50銭を計画。配当利回りに換算して4.7%台と高水準で、中期的に更なる増配への期待を内包している。

 8月15日に875円の年初来高値をつけた後はいったん水準を切り下げたが、短期筋の利食いをこなし出直り色を強め、直近で新高値街道に復帰した。しかし、引き続き800円台後半の踊り場は仕込み好機と捉えられる。修正後株価で1992年以来となる4ケタ大台回復を通過点に、更に上げ足に弾みがつくケースも考えられる。

◎日特建設 <1929> [東証P]

 日特建は基礎・地盤改良工事や法面工事など特殊土木工事を主力とし、防災工事などで高い評価を獲得している。大規模ダム工事でその施工能力の高さは証明済み。筆頭株主は麻生グループ傘下のエーエヌホールディングス(東京都千代田区)で過半の株式を保有している。豊富な受注残高を確保しており、財務体質も強固だ。26年3月期は売上高が前期比13%増の760億円と2ケタ伸長を見込む一方、原価統制に傾注し顕著な利益率改善が見られ、営業利益は同36%増の50億円と回復色を鮮明とする見通し。続く27年3月期も売上高、営業利益ともに2ケタの成長が視野に入る。株主還元にも抜かりなく、安定的に増配を続けており、今期予想配当利回りは3.7%前後となっている。

 株価は6月中旬に上放れて以降5日移動平均線を絡め強力な上昇トレンドを形成中。現在から遡ること35年前の1990年7月に7760円(修正後株価)の高値をつけるなど天井の高さも魅力。時価は約21年ぶりの高値水準にあり戻り売り圧力が希薄なうえ、信用買い残も軽く意外高の素地を内包している。

◎東亜道路工業 <1882> [東証P]

 東亜道は独立系道路舗装の大手で、舗装の表面処理、安定処理などに使うアスファルト乳剤では業界首位級の実力を有している。高速道路の新設や補修で優位性を発揮し、官公需の土木工事でも需要獲得が進む。業績は利益率上昇が急となっており、26年3月期営業利益は前期比30%増の65億円を見込み、これはピーク利益を記録した21年3月期以来の高い水準となる。高速道路などの大型案件が牽引する形となっており、トップラインについては過去最高レベルでの推移が続く見通しだ。建設DX導入による業務合理化への取り組みも積極的に推進している。

 株価は上下動を織り交ぜながらも25日移動平均線が下値を支持する形で上値指向を継続している。株主還元に前向きで年90円配当を継続中。配当利回りに換算して5.4%前後と極めて高い。既に上場来高値圏をまい進しているが、高配当利回りを武器に戻り売り圧力から解放された強みで一段の上値追いが期待できそうだ。中勢2000円台活躍が視野に入り、25日線とのカイ離修正場面は押し目買い好機となる。

◎西松建設 <1820> [東証P]

 西松建は準大手ゼネコンでダムやトンネルなど土木分野に強いほか、マーケットで注目度の高いデータセンター建設などでも施工実績が豊富で収益成長を支えている。建設業界の老舗だが、古くから良好な財務体質が同社の旗印ともなっている。26年3月期を最終年度とする中期経営計画では当初計画から売上高、営業利益ともに上方修正しており、営業利益は前期比19%増の250億円を見込む。また、配当計画については自己資本配当率(DOE)5%程度の安定配当を掲げ、今期年間配当は前期と並びの220円予想とし、足もとの配当利回りは4.2%前後と高い水準を維持している。

 8月以降5000円台前半のボックス圏での往来を続けているが、ここにきて上値指向を強め、目先5日・25日移動平均線のゴールデンクロスを示現、5月12日につけた年初来高値5500円奪回が早晩視野に入りそうだ。5500円ラインをクリアすると、1996年以来約29年ぶりの高値水準で実質的な青空圏へ突入する形となる。戻り売り圧力を浴びにくく、PER15倍前後の6700円近辺が中長期目標に。

◎日本国土開発 <1887> [東証P]

 日本国土開発は重機土木工事を得意とする中堅ゼネコンで、ダム、トンネル、道路などインフラ整備で力を発揮し、東日本大震災の復興でも大きく貢献した実績を持つ。25年5月期はトップラインの減少が続いたものの、選別受注などに伴う採算改善が寄与して営業損益は黒字転換を果たした。続く26年5月期は増収転換が見込まれるなか、営業利益は前期比51%増の35億円と回復色を一段と鮮明にする見通しだ。今期年間配当は前期と並びの22円を計画するが、株価は500円前後と低いため、配当利回りは4.3%台に達する。それにもかかわらず、PBRが0.6倍前後と解散価値を4割も下回っていることを考慮すると株価の水準訂正余地は大きいといえる。

 株価は23年9月に686円の高値を形成した後は下値模索の動きとなり、昨年2月以降直近まで約1年半にわたって400円台前半から500円台半ばのボックス圏推移を続けてきた。しかし、週足チャートで13週・26週移動平均線のゴールデンクロスが接近しており、ここは仕込み好機といえる。まずは600円台乗せを目指す。

株探ニュース


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