木下智夫氏【日経平均4万5000円台乗せ、リスクオン相場の先行き】(2) <相場観特集>



―米ハイテク株高が東京市場に追い風も高値警戒感―

 16日の東京株式市場では朝方は前日の米株高に追随し、日経平均株価は一時フシ目の4万5000円台に乗せるなど最高値圏での強調展開を示したが、その後は目先利益確定の売り圧力も顕在化し、一時マイナス圏に沈むなど上値の重さが意識された。日米でリスクオンの地合いが継続する一方で高値警戒感も拭えない状況となっている。ここからの株式市場の展望についてブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏と、インベスコ・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト木下智夫氏に話を聞いた。

●「短期的には4万5000円を挟んだ動きを想定」

木下智夫氏(インベスコ・アセット・マネジメント グローバル・マーケット・ストラテジスト)

 トランプ米政権の関税政策を巡る不透明感が後退するなか、石破茂首相が辞任を表明し、参院選後に広がった景気刺激策への期待感が一段と強まった。日本の4~6月期実質国内総生産(GDP)は、物価高のなかでも個人消費の伸びが確認される内容だった。関税の影響が顕在化する7~9月期の日本経済は減速を余儀なくされるとみているが、10~12月期は回復に向かうだろう。ただし、年末時点での国内景気の回復をすでに日本株は織り込んでいる。10月の自民党総裁選に前後して大型の景気対策が打ち出された場合、一時的に上値を追う動きが出る可能性はあるものの、短期的に一段の大幅な上昇は考えにくい。今後1ヵ月間の日経平均は4万5000円を挟んだ動きとなるとみている。

 日銀の利上げのタイミングは12月の決定会合となり、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月と10月、12月の3会合いずれも利下げに踏み切ると予想している。今後1~2ヵ月間で米国では景気の減速を示す経済指標が相次ぐ恐れがある。FRBは利下げにより経済の下振れリスクに対応することになるはずだ。日銀は当面、米国経済の動向を注視するスタンスをとらざるを得ない。米国株は軟調な経済指標の悪影響を利下げ効果が相殺する形で目先は横ばい圏となると想定されるが、年末に向けて海外からの直接投資や減税による効果を支えに悲観が和らぎ、11月以降はテック株以外も物色されて更なるアップサイドに向かう動きが見込めそうだ。

 その際は日本株も上昇軌道となり、日経平均の年末の水準としては4万6000円程度と想定している。もっともテール・リスクではあるものの、米国景気が想定を超える落ち込みとなった場合は米国も日本も株式相場の調整を余儀なくされる。次期自民党総裁が消費減税を支持する姿勢を示して財政不安が高まり、金利急上昇を伴って日本株が下押しされるというシナリオにも留意が必要だ。

 国内での景気刺激策に関しては、家計に対して直接メリットとなるような具体策が求められている。その面では足もとではグロース系が勢いづいているなかではあるが、注目すべきセクターとして一般消費財やサービスも加わることとなるだろう。防衛費予算の増額の恩恵を受ける防衛関連株も投資家からの関心の高い状況が続くに違いない。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(きのした・ともお)
1987年に野村総合研究所に入社。ワシントン・オフィスやシンガポール・オフィスなどでの海外経済・資本市場分析業務や世界銀行でのコンサルタント業務などを経験した後、野村証券に転籍。香港での中国・アジア経済調査責任者を経て、東京においてチーフエコノミスト、チーフ・マーケット・エコノミストを歴任。2019年4月よりインベスコ・アセット・マネジメントに入社、現職。日米欧や中国、主要新興国を含むグローバル経済・金融市場の分析・情報を投資家やメディアなどに提供している。1987年京都大学経済学部卒、1996年ノースウェスタン大学経済学修士課程修了(経済学修士)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。


株探ニュース


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