木下智夫氏【日経平均一時3100円超す下落、波乱相場の先行きは?】 <相場観特集>



―AI・半導体関連株に売り圧力、米雇用統計後の金利上昇で警戒感―

 8日の東京株式市場で日経平均株価の下げ幅は一時3100円を超えた。終値での下落幅は2563円と今年2番目の大きさとなった。これまで相場の牽引役となったAI・半導体株への売り圧力が強まった一方、東証業種別指数は33業種中10業種が値上がりし、プライム銘柄の値上がり銘柄数は全体の30%弱となるなど、リスク回避ムード一色というには程遠い相場付きとなった。「波乱相場」の先行きをどう読むべきか。インベスコ・アセット・マネジメント グローバル・マーケット・ストラテジストの木下智夫氏に話を聞いた。

●「イラン戦争終結なら海外中銀はハト派化」

木下智夫氏(インベスコ・アセット・マネジメント グローバル・マーケット・ストラテジスト)

 5月の米雇用統計を受けて米国で利上げ観測が高まった。前週末の米国市場においてハイテク関連株への利益確定売りが膨らみ、この流れが週明けの東京市場に波及した。直近までキオクシアホールディングス <285A> [東証P]などAI関連株が大きく上昇していたゆえに、日経平均は大幅安を余儀なくされることとなった。12日には米スペースX<SPCX>が上場する。巨額の資金調達が行われることを踏まえると、一時的な市場へのインパクトについてある程度は想定しなければならない。

  AI関連株は利益確定売りが出やすい状況にあり、しばらくはボラタイルな展開が想定されるが、日本株市場全般への期待が損なわれたというわけでもない。マーケットでは米国とイランの終戦期待が広がっている。最終的な合意に向けて乗り越えるべき高いハードルがあるとはいえ、いずれ終戦期待が市場の確信に変わる場面を迎えることになるはずだ。その際は原油価格の下落を伴ってインフレ圧力が低下し、海外中銀のハト派化も視野に入ってくる。出遅れていた銘柄群にはかなり強いリバウンドをもたらすに違いない。米国が再びイランに全面的な攻撃を仕掛けた場合は世界的なスタグフレーション懸念が再び強まることになるものの、現時点ではテールリスクである。この先1ヵ月間の日経平均は6万2000~6万7000円で推移するとみている。前週の段階で、日経平均構成銘柄のうちイラン戦争前の水準まで戻した銘柄が80銘柄強に過ぎなかったことを踏まえると、幅広い銘柄に浮揚力を与えることになりそうだ。

 イラン戦争終結後のリバウンド局面を通過した後は、グローバルでの分散投資の流れが再燃すると考えている。米国株に集中していた海外投資家の資金の受け皿となる形で、日本株は着実に上昇基調を続けることになると予想している。AI関連株についても割安な水準から業績期待を伴って上昇してきた経緯がある。落ち着きを取り戻した後は、ポジティブなニュースを支えに堅調な動きを示すことになるはずだ。

 15~16日の日銀金融政策決定会合では利上げ決定がメインシナリオとなった。市場にはすでに織り込まれており、想定通りの結果なら日本株への影響は限定的なものにとどまるとみている。16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)については政策金利が据え置かれる見通しだ。イラン戦争という不確実性が存在するなか、米連邦準備制度理事会(FRB)は引き続き経済データを重視しながらの政策運営が求められることになる。ウォーシュ新議長が重要視する指標や、四半期経済見通し(SEP)の公表のあり方などについてどのような情報が発信されるかも注目される。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(きのした・ともお)
1987年に野村総合研究所に入社。ワシントン・オフィスやシンガポール・オフィスなどでの海外経済・資本市場分析業務や世界銀行でのコンサルタント業務などを経験した後、野村証券に転籍。香港での中国・アジア経済調査責任者を経て、東京においてチーフエコノミスト、チーフ・マーケット・エコノミストを歴任。2019年4月よりインベスコ・アセット・マネジメントに入社、現職。日米欧や中国、主要新興国を含むグローバル経済・金融市場の分析・情報を投資家やメディアなどに提供している。1987年京都大学経済学部卒、1996年ノースウェスタン大学経済学修士課程修了(経済学修士)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。

株探ニュース


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