明日の株式相場に向けて=「自動車関税」の突風と「地銀再編」の舞


 きょう(27日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比227円安の3万7799円と反落。トランプ米政権が打ち出す相互関税が4月2日に導入の方向となることで、ここにマーケットの意識が集中していたが、26日にトランプ米大統領は米国が輸入する自動車すべてに例外なく25%の関税をかけることを表明した。不意打ちを食らったマーケットは大きく揺れた。前方に注意を払いながら慎重に歩を進めていたところに、瞬間風速30メートル超えの横殴りの突風に見舞われたような状態。米ナスダック総合株価指数が2%超の下落をみせ、東京市場も朝方から波乱含みの値動きを余儀なくされた。当然ながら自動車株が売りターゲットとなったほか、米エヌビディア<NVDA>の急落を引き継いで、アドバンテスト<6857.T>など半導体関連株も売りの洗礼を浴びた。

 トヨタ自動車<7203.T>が商い増勢のなか下値を探ったが、マツダ<7261.T>やSUBARU<7270.T>などの下げが大きい。この自動車関税が厄介なのは、自動車や自部品メーカー以外の周辺企業にも大きな打撃を与えてしまうことだ。きょうのフジクラ<5803.T>や古河電気工業<5801.T>などはデータセンター関連の一角として売られたのではなく、自動車向けワイヤーハーネスの需要減速懸念が下げを加速させた。このほか、自動車の内装に絡む素材メーカーなどにも売りが波及している。もっとも、自動車と半導体関連が激しく売り込まれたが悲観一色に染まったわけではなく、強さを発揮するセクターがあったのは光明ともいえる。全体指数、特にTOPIXを支えたのは銀行や生保などの金融株であった。結局、個別は値上がり銘柄数が値下がりを大きく上回り、TOPIXは小幅プラス圏で着地した。

 銀行株が強いといっても、主役は“いつものメガバンク”ではない。地銀株が一斉にオンザステージの様相となった。千葉県で一頭地を抜く存在の千葉銀行<8331.T>が同県3位に位置する千葉興業銀行<8337.T>の発行済み株式数の約2割を取得する方向にあることがメディア報道で伝わった。これが経営統合に向けた動きとして耳目を集めたほか、くしくもこれにタイミングを合わせたように、しずおかフィナンシャルグループ<5831.T>傘下の静岡銀行と山梨中央銀行<8360.T>、八十二銀行<8359.T>の3行がきょう午後4時半から都内で記者会見を行うと発表。この一連の動きに市場はにわかに色めき立つこととなる。

 地銀再編というテーマはこれまでに何度も取り上げられてはきたが、持続性に乏しかった。合併や資本提携など再編の動きが実際に生じても単発の打ち上げ花火のような状況で、その時だけ当該株が動意し、物色人気が波及するにしてもせいぜいその周辺の地銀の株価を刺激して終わりというケースが少なくない。今回もそのパターンを踏襲する可能性は否定できないが、3月期末目前というタイミングで、今は国内金利上昇による収益(運用環境)改善の追い風が吹き始めた矢先でもある。同時期に複数の資本絡みの動きが顕在化したことは、投資マネーが無関心ではいられない状況を作り出している。

 もっとも、次の再編絡みの地銀はどこかと当たりを付けるのは難しい。ここは発想を切り替え、地銀業界に再編旋風が遅かれ早かれ本格化するのであれば、それを商機として捉える企業が出てくる点に着目したい。“風が吹けば桶屋が儲かる”というが、その桶屋以上に恩恵を享受するのが、金融向けシステム構築及びソリューションビジネスを展開する企業だ。既に金融業界からシステム開発の引き合いが活発なニーズウェル<3992.T>や、クレジットシステムの実績豊富で人工知能(AI)活用でも強みを発揮するクロスキャット<2307.T>などが関連株の常連といってよいが、このほかにも有力な銘柄をいくつか挙げてみる。

 まず、TDCソフト<4687.T>。同社は中長期にわたる利益成長を継続中で、金融ITソリューションが売り上げの半分近くを占める。また、金融ソフト開発で定評のあるNSD<9759.T>も好実態で10年以上にわたる増収増益トレンドは特筆に値する。更に金融向けコンサルに強い三菱総合研究所<3636.T>は、AIによるローン審査効率化などで地銀の実務支援を行うなど実績を重ねている。近い将来にスポットが当たる可能性がありそうだ。

 あすのスケジュールでは、3月の都区部消費者物価指数(CPI)、日銀金融政策決定会合における主な意見(3月18~19日開催分)が朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。また、この日はプログレス・テクノロジーズ グループ<339A.T>、トヨコー<341A.T>の2社が東証グロース市場に新規上場する。海外では2月の英小売売上高、3月の独失業率、2月の米個人所得・個人消費支出、米個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)、3月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)など。なお、インドネシア市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS


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