明日の株式相場に向けて=「相互関税」発動で米株高は終焉か


 きょう(2日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比101円高の3万5725円と続伸。前日終値を軸とした狭いゾーンでひたすら上下動を続けたが、4兆円ソコソコの売買代金に象徴されるように様子見ムードに終始した1日であった。それでも日経平均がプラス圏で引けたのは御の字と言えなくもないが、ファーストリテイリング<9983.T>の寄与度が1銘柄で130円強に及んでおり、日経平均は全体相場の実態とはカイ離していたことが分かる。TOPIXは反落し、個別株に目を向けても値下がり銘柄数が1200あまりに達し、プライム市場全体の74%を占めたことからも相場の地合いの悪さが汲み取れる。

 もっとも、商いを膨らませた主力級の銘柄には高いものが目立ったのも事実。売買代金上位10傑でみると9銘柄が上昇していた。ここ売られていた三菱重工業<7011.T>をはじめとする“防衛関連三羽烏”や、アドバンテスト<6857.T>など半導体製造装置の主力株に空売り筋の手仕舞いとみられる買いが観測された。しかし、当然ながらこれを底入れの兆候とみなすことはできない。

 現地時間2日、日本時間であす3日の早朝に世界を大きく揺るがした「相互関税」の詳細についてトランプ米大統領が公表する。全世界の耳目を集めることは必至だが、果たしてこのビッグイベントを通過すれば、悪材料出尽くしとなるのかといえば、その可能性は低い。米国が仕掛けた関税合戦は、今はまだ落としどころは見えなくても、どこかで妥協点を見つけるだろうという希望的な観測があった。しかし、25%の自動車関税を今週から一律で発動すると正式に表明したあたりで、どうもトランプ大統領はディールとしてではなく、本気で関税による資金回収を考えているという見方が強まってきた。

 貿易戦争は地政学的なリスクに発展する。トランプ大統領が命名した「解放の日」はそのパンドラの箱を開放することにもなりかねない。紛れもなく矛先は自国に向いている。市場関係者からは「このままではアメリカ・ファーストではなく、アメリカ・バーストになる」という声も聞かれる。今回の相互関税について、トランプ氏は2年以内に6000億ドル、日本円で約90兆円が米国に入ってくると主張したことが伝わっている。これに加えて自動車関税分が1000億ドル相当と試算され、この2つを合わせると100兆円を超える“財源”が米国に流入するというわけだ。しかし、この関税による上乗せ分を誰が負担するのか。仮に消費者が被るとすれば、物価高のなかで消費意欲は瞬間冷凍状態と化す。トランプ関税が「輸入消費税」といわれる所以だ。その場合、リセッションにとどまらず、ラスボス的なスタグフレーション懸念が現実味を帯びることになる。

 四書の孟子の故事成語を引けば「恒産なくして恒心なし」、つまり安定した生活基盤がないと人心は乱れ、結果として政権も瓦解してしまう。今の状況がトランプ大統領に見えていないはずもない。国民の信頼は常に湧いて出てくるような代物ではなく、むしろあっという間に枯れる。トランプ氏が言う「経済政策が軌道に乗るまでの少しの間」とは、どのくらいの期間なのか。出口が見えないなかで、逆境を我慢する殊勝な米国民はトランプ氏の熱狂的な支持者に限られるだろう。

 直近のシカゴ大学による世論調査でトランプ政権の通商政策を支持しないと答えたのは全体の60%に達したという。現時点で6割なら、数か月後はどうなっているかはおおむね察しが付く。米株高終焉のシナリオが始動するか否か。五経の筆頭である易経に「君子は豹変す」とある。このまま氷山に突っ込むことなく、舵を切り直す度量をトランプ大統領が持ち合わせていることに世界は期待するよりない。

 あすのスケジュールでは、4月の日銀当座預金増減要因見込み、週間の対外対内証券売買契約がいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、午前取引時間中に債券市場では10年物国債の入札が予定される。午後取引時間中には日銀が需給ギャップと潜在成長率を発表する。海外では2月の豪貿易収支、3月の財新中国非製造業購買担当者景気指数(PMI)、ECB理事会の議事要旨、週間の米新規失業保険申請件数、2月の貿易収支、3月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数などにマーケットの注目度が高い。また、この日はFRB高官に発言機会が相次ぐ。ジェファーソンFRB副議長とクックFRB理事の講演が行われる予定。なお、あすの台湾市場とインドネシア市場は休場。(銀)

出所:MINKABU PRESS


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