明日の株式相場に向けて=米株波乱も、円高加速で内需株祭り開幕へ


 週明け21日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比450円安の3万4279円と大幅反落。前週末は欧米株市場がグッドフライデー(聖金曜日)の祝日で総じて休場だったこともあり、手掛かり材料難が意識された。前週1週間でみると、日経平均は5営業日で4勝1敗と上値指向が強く、週間差し引きでも1100円あまりの上昇をみせていた。その反動が出たわけだが、とはいえ思いのほか深押しとなった。これは外国為替市場でドル安・円高が急ピッチで進んだことが警戒されたものだ。

 ドル・円相場が一時1ドル=140円台半ばまで急激に円高方向に振れており、これが輸出セクターを中心に株式市場にとって強烈な向かい風となっている。トランプ関税発動によってデメリットを被る業種は半導体や自動車を筆頭に、鉄鋼や電子部品、機械、海運などに及ぶ。そしてこれらは共通して円高によるデメリットが大きい業種でもある。ある意味分かりやすいワンツーパンチで、これと距離をとらず値ごろ感を頼りに買い向かうのは蛮勇のそしりを免れない。空売りを呼び込んでのリバウンドがあるとしても、その動きを見切ってタイミング良く買い出動するのは至難の業である。

 今週にベッセント米財務長官と加藤財務大臣の会談が行われる見通しだが、これを前にして円高への思惑が増幅されているという見方はある。ただ、足もとの円高進行はトランプ政権主導での「マールアラーゴ合意」、つまりスティーブン・ミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長の主張に沿ったドル安圧力とは、本質的に違うともいえる。今の為替市場で何が起こっているかを考えれば答えは自明であり、円高というよりは、ドルという基軸通貨に対する将来的な不安が為替相場に反映されている。

 米国からのキャピタルフライトを象徴するトリプル安の流れの中でドルの独歩安が演出されており、これは米株市場にとっても危険な兆候である。トランプ米大統領はパウエルFRB議長の解任を検討していると伝わっているが、これは米国に対する信頼崩壊を加速させる以外の何ものでもなく、焦りが更なる悪循環につながる気配が漂う。

 そうしたなか日経平均は荒い値動きだが、これは関税でデメリットを被る銘柄群が全体指数を上下に振り回していることは言うまでもない。例えば、空売り筋が買い戻すタームに入ると半導体関連株などはとりあえず戻り足に転じるのだが、それは時間的に長くは続かない。残念ながらショートカバーが一巡すれば売り直される、その連続である。この呪縛を解くためには、逆説的になるが収益の落ち込みが実際にはっきりするまで待つしかない。現実の業績悪を嫌気する形で、総投げとなって底が入るというのが株式市場のメカニズムである。

 一方、こうした流れはこれまで株式市場で花形とはなり得なかった内需株に、本格的に資金が流入する「潮流変化」をもたらしている。かつてのような幕間つなぎではない形での内需株物色に乗るのであれば、今がその時である。前週紹介したワッツ<2735.T>は100円ショップ関連株の出遅れとして人気に火がつき、年初来高値を一気に更新したが、昨年の高値からみればまだ中段にあり、依然として水準訂正余地を残している。同社株に限らず、今後は円高メリットを享受する内需株を対象としたリターンリバーサルが一つの物色テーマとなりそうだ。小売りでは西友の買収で話題となったトライアルホールディングス<141A.T>。紙パルプ業界では、王子ホールディングス<3861.T>が中期経営計画発表を材料視され直近動意づいたが、このほか大王製紙<3880.T>や三菱製紙<3864.T>などに投資マネーが横軸展開する可能性がある。トラベル業界ではインバウンドならぬアウトバウンドで、円高見直し機運が台頭しそうなベルトラ<7048.T>をマークしてみたい。

 あすのスケジュールでは、3月の食品スーパー売上高が後場取引時間中に発表される。また、その後に基調的なインフレ率を捕捉するための指標及び実質輸出入の動向が日銀から開示される。また、この日はIPOが1社予定されており、東証グロース市場にデジタルグリッド<350A.T>が新規上場する。米国ではFRB高官の講演が相次ぎ、ジェファーソンFRB副議長のほか、クグラーFRB理事の講演が予定されており、その発言内容にマーケットの耳目が集まる。このほか、個別企業ではテスラ<TSLA>やベライゾン・コミュニケーションズ<VZ>の決算発表にも注目度が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS


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