明日の株式相場に向けて=逡巡する米国と嗤う中国


 きょう(23日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比648円高の3万4868円と急反発。寄り後早々に900円超の上昇で3万5000円台まで駆け上がる場面もあったが、その後は思惑が入り乱れるなか3万4000円台後半で右往左往した。トランプ米政権がハンドルを右に切るのか左に切るのか、皆目分からないなかで全体相場もハイボラティリティな地合いを余儀なくされている。

 もっとも、トランプ米大統領の発言内容も日によってブレまくっていることから、マーケット側からも呆れられ、信用度がかなり希薄化している印象を受ける。トランプ氏はFRBへの利下げ圧力を高めようとして、パウエルFRB議長の解任を検討するという報道でアドバルーンを上げたつもりだったと思われるが、これに株式市場が拒絶的な反応を示しNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに急落したことで、内心慌てたはずである。トランプ氏は自身の政策を引っ込めれば株価が上がるし、政策にまい進すれば下がるという不都合な現実を、不本意ながら認めざるを得なくなってきた。

 そうしたなか、前日の米国株市場は5営業日ぶりにリスクオフの巻き戻しが鮮明となった。立役者となったのはトランプ氏ではなくベッセント米財務長官だ。ベッセント氏はこの日の講演で「米中両国で高関税をかけ合う現状は持続可能ではなく、対立は長く続かない。状況は改善すると期待している」というコメントを発したことが伝わり、これが好感された。とはいえ、前後の文脈は定かではないものの、ここだけ抜粋してみれば正直大したことは言っていない。何か当事者というよりは第三者的に現状を分析したような発言となっているが、これが株式市場が急反発した原動力となったとの解釈がなされている。

 トランプ米大統領もこれまで中国との交渉はうまくいくだろうという趣旨のコメントを何度が発していたはずだが、その時はスルーされた同じ内容でもベッセント氏が述べたことで一気にショート筋の買い戻しに火がついた。これに乗る格好で、その後にトランプ氏はパウエルFRB議長を「解任するつもりはない」と発言、米株価指数先物の動きを見る限りリスクオフのアンワインドに拍車をかける形となった。遅かれ早かれ、米国株市場はリバウンド局面に移行するタイミングが意識されていたが、何かしらの口実は欲しいところで、そこに今回のベッセント発言がピースとしてぴったりと嵌まった感じである。

 目先、理由はどうあれ米株市場のベクトルの向きは変わった。個別株でそれを暗示するのがテスラ<TSLA>の値動きである。現地時間22日夕刻に発表された同社の1~3月期決算は最終利益が前年同期比7割減と衝撃的な落ち込みをみせた。イーロン・マスク氏の政権関与で反発が広がりテスラ車の不買運動によって収益に大きなダメージを受けた。この日、同社株は取引終了時に4.6%高に買われていたのだが、驚いたことに時間外で売り直されるどころか更に買いに弾みがついた。ほぼ空売りの買い戻しといってよいが、マスク氏が5月から政権への関与を大きく減らす、つまり政府効率化省での活動を事実上自粛すると明言しており、これが引き金となった面もあるようだ。そして、これはトランプ政権、そして米株市場へと順繰りに追い風をもたらすことになる。

 しかしながら本質的にはまだ何も変わっていない。ベッセント氏の発言も、そもそも米中間の交渉がまだ始まっていない段階である。今後どう転ぶか予断を許さない。したたかな中国は米国の足もとを見て譲歩を引き出す方向で動くことは間違いない。こうしている間にもグローバル経済への先行き不透明感が強まっている。直近IMFが今年の世界経済見通しを下方修正したが、1月時点の3.3%成長から2.8%に大きく引き下げた。しかもその内訳をみると、下方修正の度合いが際立って大きかったのが米国であり、2.7%から1.8%に引き下げられている。トランプ関税は巨大ブーメランとなって米国に返ってくる。「猫の首に鈴を付けるのは、既にマーケットがキーパーソンとみなしているベッセント氏しかいない」(準大手証券ストラテジスト)という声も聞かれるが、道は険しい。

 あすのスケジュールでは、3月の企業向けサービス価格指数が朝方取引開始前に日銀から開示される。週間の対外・対内証券売買契約も同時刻に発表される。前場取引時間中に2年物国債の入札が行われ、後場取引時間中には3月の全国スーパー売上高が発表される。この日はIPOが1社予定されており、東証グロース市場にLIFE CREATE<352A.T>が新規上場する。海外では1~3月期韓国国内総生産(GDP)が開示されるほか、4月の独Ifo企業景況感指数が注目される。また、米国では3月の耐久財受注額、週間の新規失業保険申請件数、3月の中古住宅販売件数などにマーケットの関心が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS


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