明日の株式相場に向けて=9月末に向け「一括高配当株」が跳躍へ


 週明け8日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比625円高の4万3643円と大幅高で3連騰。今週末12日にメジャーSQ算出日を控え、引き続き株価指数先物主導で大車輪状態に振り回されているが、週明けはその先物に青天の霹靂ならぬ突発的な上昇気流が発生し、日経平均は一時800円超の上昇で青空圏に舞い上がる展開に。終値で最高値更新はお預けとなったが、TOPIXの方はほぼ終日8月18日の終値を上回る水準で推移し、最高値更新となった。石破首相の退陣表明がリスクオン相場にトップギアを入れる格好となった。筋書きのないドラマが今後どういう方向でまとまっていくのか皆目分からないが、本能的に買いというのがきょうの相場であったように見える。

 9月は外国人投資家の日本株(現物株)の売り越しパターンが定着しており、とりわけ直近2年ではその傾向が強かった。2023年は2兆円強、24年は3兆円弱の売り越しとなるなど金額も1カ月当たりとしてはかなり高水準に膨らんでいる。今年も9月相場の出足は波乱含みの値動きで、12日のメジャーSQ算出に向けて売り仕掛けの思惑も一部にはあった。これまで問答無用の踏み上げ相場によってショートポジションがかなり解消されていたこともあり、目先は株価下落局面で買い戻しによるブレーキが利きにくいという打算も働きやすかったと思われる。しかし、思惑と逆に振れるのが相場の常で、直近はハイボラティリティな地合いのなかも買いの勢いが売りを凌駕した。

 前日のタイミングで石破首相が退陣を表明したことは、大方の予想にはなかったサプライズな出来事だったが、石破政権の次を意識する動きは既に市場には広く浸透していた。きょうも朝方取引開始前は「退陣が早まったというだけで、寝耳に水ということではなく反応も限られるのではないか」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれた。しかし、ここまで解散総選挙すらチラつかせて粘りに粘った石破首相が急転直下で辞意を示したことから、その裏側を読む動きも出ているもようで、強気筋は“政局のパラダイムシフト”を主張する声もある。トランプ米大統領は石破首相の退陣表明に「驚いている」とコメントしたが実際はそうではなかったのではないか、米国側の誘導があったのではないかという穿った見方である。その延長線上に高市早苗前経済安保担当相の新総裁就任の思惑が広がり、高市トレードを起爆剤に全体相場を押し上げる背景ともなった。

 しかし市場関係者の意見を聞く限り、次期自民党総裁の座を高市氏が射止めるとはみていないのが多数派であるようだ。前回の総裁選で岸田前首相が事実上前言撤回に近い形で石破氏に票を入れたことでも明らかなように、今回も永田町のパワーバランスがマーケットの期待とは違う選択肢に流れる可能性が高いとみる向きは多い。そもそも先の選挙で高市氏の支持基盤が弱体化しており、多数候補者が出てくれば推薦人の段階でハードルを越えられないケースも考えられる。きょうはFFRIセキュリティ<3692.T>や助川電気工業<7711.T>など高市トレードの最右翼銘柄が大きく上昇したが、買い一巡後に利食い圧力が表面化したことにも半信半疑の投資家心理が反映されている。

 日経平均はまだ全容が見えぬ新政権への期待で買われているが、フワフワとした思惑先行で行き過ぎて買われている部分も否めない。しかし、ここで地に足をつけたストラテジーで目先の強気相場にしたたかに乗る手段がある。それは今月末、厳密には26日の権利付き最終売買日に向けて株主還元の権利取り狙いの買いに着目することだ。新NISAの導入を契機に個人投資家のニューマネーが誘引され、その流れのなかで高配当株に対する注目度も高まった。特に3月や12月決算期末やその中間期末である9月や6月に、駆け込みで配当権利を取りに行く動きはひとつの風物詩となっている。ここでマークしたいのは、9月末に本決算を迎える高配当株の中で、しかも「期末一括配当」という欲張りな条件を満たしている銘柄である。

 もちろん配当権利を取りに行くという目的はあるが、そのプロセスにおける株価上昇つまりキャピタルゲイン獲得が実は本丸ともいえる。まず、人工知能(AI)関連株のアトラエ<6194.T>は26年9月期末に一括で31円配当を計画、時価換算で3.8%の利回りとなる。また、エスケーエレクトロニクス<6677.T>は128円予想で利回り4.3%。キャリアデザインセンター<2410.T>も100円配当で同じく4.3%と高配当利回りだ。更に不動産開発のディア・ライフ<3245.T>は62円配当を計画し、4.6%台の高配当を見込む。

 あすのスケジュールでは、8月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から開示される。また、前場取引時間中に6カ月物国庫短期証券の入札が行われる。後場の取引時間終盤に発表される8月の工作機械受注額にもマーケットの関心が高い。海外ではこの日に国連総会が開幕するほか、ドイツのミュンヘンで「2025国際モビリティー見本市」が14日までの日程で開催される。米国では米アップル<AAPL>の特別イベントが行われ「iPhone17」発表が見込まれており、その内容に耳目が集まりそうだ。また、米国では3年物国債の入札が予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS


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