明日の株式相場に向けて=中東情勢とスタグフレーションの足音


 きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1519円高の5万4248円と急反発。週明け9日に「青天の霹靂」を思わせる急落に見舞われ、再び「試練の3月相場」の様相が強まったが、この日は結局下ヒゲ陰線で終値はほぼ75日移動平均線と同水準で着地。この土俵際の踏ん張りが暗示したわけではないが、きょうはトランプ発言効果によって首尾よく切り返しに転じた。しかし、まだ油断はできない。

 中東情勢の緊迫が長期化しているなかで見切り発車の買いは避けるべきとしたが、現時点でその見方に変わりはない。前日はトランプ米大統領が米CBSテレビのインタビューで、イランに対する軍事攻撃は「ほぼ終わった」と発言、イランのすべての戦力を壊滅させたことで事実上戦争が終結したような状態にあることに言及した。その後、トランプ氏は南部フロリダで記者会見を行い、ここでも改めてイランへの軍事作戦はまもなく終結するとの見通しを示した。しかし、トランプ発言の軽さは朝令暮改の関税発動でも証明済みで、TACOトレードのネタにされ続けてきたことも事実。その意味で今回も信用が置けない部分はある。イラン側は攻撃拡大を警告するなど抵抗する姿勢を崩していない。3月末の米中首脳会談に向けて、トランプ氏は中国側にイラン絡みで何らかのディールを仕掛ける可能性はあるが、中国側も一筋縄ではいかないはずである。

 前日の米国株市場は朝方に800ドルを超える急落に見舞われたが、その後は漸次下げ渋り、取引終盤に上昇に転じた。ナスダック総合株価指数も前半は下値模索の動きを強いられていたが、その後立ち直り、結局この日の高値圏で着地し上昇率も1.4%とダウを上回った。東京市場もこれを引き継ぐ展開となったわけだが、米株市場よりもはるかにボラタイルであり、朝方取引開始前の日経平均先物は2000円高前後の上昇で、買いポジションを持っていた向きは歓喜の声を上げたかもしれない。もっとも、前日の同じ時間帯は先物が4000円前後の下落で目を疑うような状況だったわけで、それからすれば半値戻りに過ぎない。とにかく今はAIトレードで上下に振り回され、そこに人間の観点では明確な根拠がないからこそ投資家は翻弄される。

 きょうの取引時間中も喜べるほどの勢いはなかった。今のところ日経平均は5日移動平均線が綺麗に頭を抑える形となっており、下落トレンド途上であることを示唆している。前日に下ヒゲで踏みとどまった75日線を改めて下に突き抜けた場合は、失望売りを誘発する可能性がある。きょうは一気に5万4000円台に切り返したが、戻りにつく(順張りで買いを入れる)リスクも小さくない。投資する側としては打診買いにとどめ、今しばらくは基本的に「静観」が正しい選択と言えそうだ。

 今回の急落局面に際しては、追い証絡みの投げが出るどころか「個人投資家は敢然と買い向かっている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。ネット証券大手のデータでは前日時点で信用の評価損益率はマイナス14%。これは買い建てている側にすれば痛痒を感じる段階ではない。2月末時点で評価損益率はほぼプラマイゼロ水準で、これは超過熱状態といってよいが、それがクールダウンして通常運転に戻ったレベルである。実際、週明けの暴落前の段階で同証券の信用買い残は金額ベースで4247億円、暴落後の金額は4324億円。つまり信用で買っている向きが売りを上回っているのである。個人は“怖いもの知らず”で強気に傾斜している。

 今週はあす11日に2月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、週末13日には遅れていた1月の米個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)が開示される。この2つは最近の原油価格高騰の影響が織り込まれておらず、証文の出し遅れのような印象も受けるが、それでも重要なイベントとして位置づけられる。前週末6日に発表された2月の米雇用統計で雇用者数が大きく下振れたことがその理由だ。CPIとPCEデフレーターが万が一コンセンサスを大きく上回った場合は、雇用情勢悪化の中での物価上昇というスタグフレーション懸念が現実味を帯びて姿を現してくる。こうなると、利下げという手段もままならず、株式市場はカオスの領域に足を踏み込む可能性がある。中東情勢だけでなく、今週は色々な観点で正念場といえそうだ。

 あすのスケジュールでは、2月の企業物価指数が朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に5年物国債の入札が行われる。個別ではANYCOLOR<5032.T>の26年4月期第3四半期(25年5月~26年1月)の決算発表が予定されている。なお、この日で東日本大震災から15年となる。海外ではチリ大統領の就任式が行われる。また、2月の米消費者物価指数(CPI)に対するマーケットの関心が高い。2月の米財政収支も公表される。このほか、ボウマンFRB副議長がディスカッションに参加予定で、その発言内容に耳目が集まる。(銀)

出所:MINKABU PRESS


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